【アニメ感想】映画ちいかわ 人魚の島のひみつ
前書き
本記事には映画ちいかわ 人魚の島のひみつ本編に関わるネタバレを含みます。
筆者はちいかわをほとんど知らず、アニメで50話くらいまで一夜漬けした程度の初心者です。
作品概要
作品タイトルであるちいかわとは、 なんかちいさくてかわいいやつ の略であり、主人公を指す名称として使われているようです。1
今や、原作未読であってもどこかしらで目にするであろう国民的コンテンツになりました。
本作はそんなちいかわ原作における、セイレーン編と呼ばれる一連の物語を劇場アニメーション化したものです。
ちいかわたちは謎の鳥が落としていったチラシの甘い内容に釣られてある島へ向かい、そこでセイレーンと島民たちの間で起きているトラブルに巻き込まれ、長い冒険の果てにその結末を見届けます。
ゆるふわマスコットの夏休み?
なんかちいさくてかわいいやつだけあって、ちいかわは小さくて可愛いし、他のキャラクターたちもどこかに可愛さを持っています。
序盤に感じるゆるふわさ加減は、本作のほんの入口でしかありませんでした。
気がつけばずっしりと来る湿度の感情に包まれて、身動きが取れなくなる。
まるで、一枚のチラシに釣られてホイホイと島までやってきてしまったちいかわたちがセイレーンの歌声とツタに絡め取られるかのように、視聴者の情緒もがんじがらめにされる。そんな作品でした。
ちいかわ
本作の主人公。小心者で危険に敏感なところから、戦闘面で頼りにはならなくとも、生存能力はしっかりとあります。
どうしてこの絵柄で戦闘とか生存能力とかいう言葉が真っ先に出てくるんですか?
心優しい彼2は、重要人物ヒトハとフタバに対して、真実を問いただすことをしませんでした。
お気に入りのポーチを握りしめるところが映像ではしっかりと強調されていて、ちいかわが口をつぐんだことが、自身の強い意思によるものだとわかりました。
問いただせなかったのではなく、問いたださなかった。喉まで出かかった真実を飲み込み、墓まで持っていく覚悟を決めたのです。
そうしなければ、ヒトハとフタバはタダでは済まない。それを理解し、罪の所在が明らかになるまでの猶予を、作り出したのです。
この覚悟は、ヒトハとフタバの決断にも大いに影響を与えたことでしょう。
ハチワレ
本作のメインヒロイン。ちいかわが我々にとって聞こえるように意味ある言葉をほとんど話せない一方、彼は饒舌な準主役です。
ちいかわとハチワレの心優しい二人が勇気を出すところは、王道展開と言っても良いでしょう。
うさぎ
本作の狂人。アニメ序盤から非常にエキセントリックなムーヴが目立つ変なやつでしたが、映画冒頭の船のシーンで、この世界観の中においてもしっかり異常者なんだということが伝わって安心しました。
どんな状況でも動じない強者感があり、不思議とラッコ先生よりも安心感があります。
これでCV小澤亜李は、言われないとわかりません。
ラッコ先生
討伐上位ランカーで、どうもハチワレの師匠です。
強キャラではあるのですが、劇場版補正でさらなる強敵が現れて、むしろうさぎのほうが強キャラ感あり。
CV内田雄馬です。イケボすぎる。
鎧さんたち
強面の甲冑で、声も激渋ですが、めっちゃ優しい人達です。
本映画の中では序盤にちらっと登場したきり。舞台が舞台なので仕方がありません。
くりまんじゅう先輩とシーサーちゃん
ちいかわたちが大冒険を繰り広げる傍ら、時たまカットシーンでくりまんじゅう先輩が酒を飲み、シーサーちゃんが天使のような優しさを見せてくれます。
モモンガ
本作のパニック映画で最後まで生存する性悪枠。CV井口裕香です。
うさぎとは別ベクトルの狂人で、あちらの無軌道ムーヴに癒やし感があるのに対し、こちらはちょっと引くタイプの異常者です。
島二郎
気の良いおっちゃん。とにかく善人。神砂嵐を使います。
行倒れたちいかわを介抱してくれたり、フィジカルがめっちゃ強かったり、キャロライナリーパーの粉末を持ち歩いていたりと、本映画中屈指のお助けキャラでした。
ヒトハとフタバ
本映画の最重要人物。おそらく姉妹でしょうか。3
島民で、ちいかわたちを歓迎しますが、終盤に二人の事情が明かされると映画の空気は一変。突如、百合心中のような昏い喜び4をもたらす湿気マシマシの作品に豹変します。
戦勝祝の宴でちいかわの覚悟を見た後、二人が人知れず森の奥に消え、二度と戻らない選択をするところで、それまでの冒険譚が頭の中から一気に追い出されました。
相手が心優しいちいかわだったから、二人の罪が露見するまでに猶予ができた。その間に、二人は自分たちの破滅に至る道を選択したのです。
セイレーンが真実を知った以上、島にとどまっていれば、それは島民全員に知れるところとなるでしょう。
そうなってしまえば、恐ろしいのはセイレーン以上に島民たちです。スコヴィル値に打ちのめされたセイレーンに対して過熱した集団の殺意を目の当たりにすれば、全ての元凶が明らかになった時に訪れる破滅は、想像することさえも恐ろしかったはずです。
仲の良い人もいたかもしれない。優しくしてくれた人も、きっと少なからずいたでしょう。
そんな相手から殺意を向けられるくらいなら、二人だけでどこか遠くへ逃げてしまおう。真実を知ったセイレーンから逃れられず、ふたりとも永遠の暗闇で生き続けなければならないとしても、島のみんなに恨まれ、島のみんなを呪いながら生き続けるよりはずっと良い。
押しつぶされそうな恐怖に抗うためにしっかりと手を繋いで、二人で着実に破滅への歩みを進める様が、筆者の目をスクリーンに釘付けにしました。
ちいかわたちは島を離れ、日常に戻っていく。しかし、この映画のラストワンカットは、原作のコマ通り、二人だけの島を目指すセイレーンたちです。
この可愛らしい絵柄の映画で、最後の最後を破滅への予感で締めくくることなんてある?????
本作の最大の魅力
ヒトハとフタバの、繋いだ手と緩やかな心中、破滅の予感が織りなす高湿度の感情、そして、その選択をただ無言で促すちいかわの、見た目からは想像もできないほどに苦しい覚悟が、最大の見所でした。
どうか、二人の終点への道のりが穏やかで優しいものでありますようにと、そう願わずにはいられません。