【ゲーム感想】BLUE REFLECTION/帝

目次

  1. 前置き
  2. グラフィックス
  3. サウンド
  4. シナリオ/キャラクター
    1. 星崎愛央 ほしざき あお
    2. 靭こころ うつぼ こころ
    3. 宮内伶那 みやうち れな
    4. 金城勇希 きんじょう ゆうき
    5. 春日詩帆 かすが しほ
    6. 白井日菜子 しらい ひなこ
    7. 久野きらら くの きらら
    8. 平原陽桜莉 ひらはら ひおり
    9. 平原美弦 ひらはら みお
    10. 駒川詩 こまがわ うた
    11. ユズ
    12. ライム
    13. サブタイトル
      1. Chapter0 果てなき青
      2. Chapter1 想い、陽炎に揺れて
      3. Chapter2 急行思い出発あの日行き
      4. Chapter3 もう一度踏み出すために
      5. Chapter4 星を見に行こうよ
      6. Chapter5 逢魔が時に響くのは
      7. Chapter6 絡まる糸 ささやかな祈り
      8. Chapter7 歪み
      9. Chapter8 天の川に願いを
      10. Chapter9 方舟
      11. Chapter10 リフレイン
      12. Final Chapter 夏の終わり
  5. システム
    1. スピード感を増したタイムラインバトル
    2. 偏った属性システム
    3. デートシステム
    4. フラグメント装備
    5. タレントポイント
    6. 学校魔改造計画だ!
    7. 工作
    8. ステルスミッション
    9. 難易度選択
    10. 強くてニューゲーム
  6. やりこみ
    1. トロコン
      1. ロケーションコンプリート
    2. フラグメントコンプリート
    3. 南の島DLC
  7. 総評

前置き

筆者は幻プレイ済み、澪及びれいっ視聴済み。
本記事には帝のみならず、上記作品のネタバレも含むため、未履修の方はご注意を。

グラフィックス

前作から3Dモデルは一新されたが、頭身のバランスは前作に寄せられており、続投している日菜子、ユズ、ライムについても、3Dモデルに違和感は全くない。
モーションは種類こそ多くないものの、カメラワークや表情の豊富さでしっかりカバーされているように感じる。
狭い隙間を体を横にして通ったり、四つん這いで穴を抜けたり、坂を滑ったりのアクションはライザで見たのと全く同じ。既存の技術を活かせているようで何よりである。

特に表情の作り方が劇的に進化しており、目をそらしたり、半目になったり、なんとも言えない脱力した顔になったりと、場面に合わせてコロコロ変わる表情が見ていてとても楽しい。

衣装へのこだわりも前作同様。
戦闘中のカメラワークも前作よりスピード感を重視しているように見え、前作のようにキャラクターの正面をじっくり見られる機会は減ったが、プレイヤーへのわかりやすさとダイナミックさでうまくバランスを取っている。

変身バンクはテンポを崩さないよう、ごく短いものになっており、設定で省略も可能。
見た目かっこいいので、筆者はデフォルト設定1にしたままであった。

各キャラクターに合わせたマップが作られており、マップの景色は前作よりも幅広くなっている。

夏の鮮やかさの表現については、これもライザのアトリエで培った技術をフルに活かしているように感じられる。

サウンド

前作から引き続き、浅野隼人サウンド。
前作で使われた曲も続投しつつ、新しい曲もある。新旧の曲どれも世界観やシーンにマッチしている。2

タイトルの TIE や、拠点の レッツ・ガールズトーク! は、前作のしっとりした雰囲気を踏襲しつつも、より明るいみんなの夏をイメージした曲になっている。
特に TIE は本作における BLUE REFLECTION アレンジのベースになっている。

通常戦闘の W-P.NEURONS E.SYNAPSE はともにピアノ、ヴァイオリンが熱い。通常戦闘はあっさり終わってしまうので、あまり長く聞けないのが惜しい。
バックに電子的な音色が流れているのは、やはり雫世界の電脳感を表したものなのだろうか。

放課後Ariette は、2周目エンディングでこそしっかり聞きたい曲。
この曲から、 TIED 、溢れる夏の音を聞いてのあのシーンである。3
今思い出すだけでも最高に心地よい余韻が蘇る。

シナリオ/キャラクター

シナリオ上の疑問点についてはBLUE REFLECTION/帝 シナリオを考えるに書いた。
本記事ではキャラクターと筆者が感じたエモポイントを並べていく。

星崎愛央 ほしざき あお

彼女が夏休みの補修を受けに学校へ行く途中、スマホを落として拾ったら異世界にやってきた、というところから本作は始まる。
本人曰く、取り柄もなにもない、どこにでもいる凡人。本当か?
誰とでも仲良くなれる、メンバーひとりひとりのことをしっかり見て、向き合ってくれる、いざというときにちゃんと引っ張ってくれる。あまりにも理想のリーダーでは?

名前の通り、みんなの中心にいて愛される主人公であり、プレイヤーの立場からしても好きになってしまう、屈指の愛されキャラ。

彼女は世界の崩壊から免れたリフレクターたちを救うため、未来の世界から送り込まれてきた。4
彼女は他のみんなの特別に触れて、悩みに触れて、一緒に悩んだり背中を押したりする。
そうしていくうちに、いつしか愛央自身がみんなとの絆を特別に感じるようになっていく。
たとえ自分がみんなと同じ未来に行けないとしても、何者にも代えがたい特別をくれたみんなの日常を、絶対に取り戻すのだという強い意志で進んでいく最終盤の彼女は、美しいとしか言えない。

1周目のエンディングを見た後、最初に出てきた感想は「愛央が救われなさすぎでは?」だった。
他の皆は再構築後の未来へ行ったが、愛央だけは雫世界のループに囚われ、次の愛央に対してスマホを落としていた。
そりゃあ、本人はめちゃくちゃ覚悟決めてたし、「行ってらっしゃい」とも言ってたけど、これはあんまりじゃあないかと、放心したものである。

再会を願う想いだけを頼りに、2周目を走りきった甲斐はあった。
エンディングの 放課後Ariette は愛央に向けたみんなの想いであり、その想いが届く結末が見られて本当に嬉しかった。

戦闘面ではクリティカルアタッカーかつ、コンボガード持ち。
コンボガードをきっちり決めないとコンボ数がリセットされてしまうので、ボス戦ではほとんど必須……かと思われたが、インファイト軸の戦い方をするのであればそうでもない。

CV柳原かなこ。

靭こころ うつぼ こころ

食いしん坊系女子。
メンバーの中で、愛央と最初にコンタクトした子。
困っている人がいたら手を差し伸べる、を自然に実行できる超絶いい子。
度々、重要なシーンで愛央を助けてくれるのでメインヒロインの風格あり。

メンバーの中では背が高いほう。愛央と並ぶとよくわかる。
マイペースでおっとりした性格だが、武器はライフル。父に猟銃の扱いを教わっていたらしい。

レゾナンスタイドの米テオで愛央がドン引きしてるのが好き。
澪にも有理とともにちらりと登場しているが、本作で有理の話はしていない。

戦闘面では状態異常担当。暗闇や麻痺など、決まれば非常に強力な状態異常を積極的にぶっ放していける。

CV高柳知葉。まちカドまぞくのミカン、恋する小惑星のみら、ウマ娘のオグリキャップの人。

宮内伶那 みやうち れな

こころ同様、初期組のひとり。
ややネガティブな発言が多いものの、裏を返せば冷静で慎重であるということ。
皆が嫌がって後回しにするようなことに積極的に対処しようとするし、対処させようとする。
これも後々のことを考えてのことで、基本的に面倒見が良い。

よく半目の表情をするが、これが非常に似合う。

実は記憶を失う前、勇希に告白している。
記憶を取り戻した後もその気持ちに変わりはなく、ふたりは本作において唯一、GLが明確に描かれているキャラクターである。
勇希のココロトープクリア時の、勇希からの「好き」への返事5が百点満点。勇希の過去全部ひっくるめて愛してるやつ。

冷静な常識人であるが故、周りの暴走には巻き込まれがち。
必要なときは怒るが、巻き込まれること自体はまんざらではなさそう。

戦闘面では、ノックダウン特化。最序盤に唯一回復スキルが使えるのでヒーラーと勘違いしてしまうプレイヤーもいるかもしれないが、彼女の本業はノックダウンを取っていくことである。
インファイト軸で戦うなら、彼女を入れておくとやりやすい。

CV河瀬茉希。

金城勇希 きんじょう ゆうき

こころ、伶那とともに最初からいるメンバーのひとり。
ただし、彼女は戦闘には直接参加できない。

明るいムードメーカーで、愛央とはかなり気が合うようだ。
いるだけでその場が明るくなるタイプ。
調子に乗ってオイタして伶那に怒られることも多い。

彼女の正体は、世界システムが雫世界に送り込んだ目。いわゆる発信機。
それが明らかになる終盤、明るかった彼女が本音をさらけ出すシーンは、伶那がちゃんと受け止めてくれるところも合わせてとても良い。
とにかく自分が弱っていることを誰にも悟られないように、自分もそれを自覚してしまわないように嘘で塗り固めていた勇希の絞り出す「助けて、伶那」の重みが最高。

CV芹澤優。

春日詩帆 かすが しほ

かき氷の屋台を作って、こころがかつて詩帆とともに作った秘密基地に思いを馳せていたら突然現れた。
優しくて真面目。家事全般をこなせる生活力の塊。常に敬語。

幼い頃のこころとの思い出に焦点が当たるのかと思いきや、そこまでではなく、こころと絡むイベントは意外と少なめ。
日菜子とも、記憶を取り戻した後はそんなに絡まない。
設定的には色々美味しいポジションにいるだけに、ちょっともったいなさを感じる。

彼女ときららについては、元の世界で交流のあった男性に言及するイベントがいくらかあり、燦に登場する予定であることも合わせて、詳細な人間関係はそれまで待たなければなんとも言えない状態。

彼女に関するイベントは、本作のテーマを語る上で極めて重要な示唆を含む。
彼女が登場する際のイベントにおける「だめですよ。秘密基地は、いつか出ていくためにあるのです」や、彼女のココロトープ最深層の「きっとこの思い出も、もうすぐ終わる」は、本作における雫世界、夏休みがいずれ終わることを示唆している。
彼女の絆イベントにおける「なんてことのない毎日を続けた先に、何かあるかもしれない」「だから、今乗っているレールを大事にする」は、ループし続ける愛央を否定せず、それでいていずれ彼女にも救いがあるかもしれないという希望を残してくれるものだ。

戦闘面では出の早い回復スキルを持ち、対応範囲の広い歪曲属性を主とするヒーラー兼アタッカー。
回復アイテムの用意を怠った1周目の序盤から中盤までは、ヒーラーとして外せなかった。
しらなみのモーションがかっこよくてついつい使ってしまう。

CV陶山恵実里。

白井日菜子 しらい ひなこ

我らが前作主人公。今作では、詩帆とのつながりを元に現れる。

詩帆と出会ったのは、まだバレエをしていた頃6
その頃から日菜子自身は割と達観したところがあったようで、ふたりで電車に乗って遠くへ行ったときの話ではめちゃくちゃ大人びた考え方をしている。

ユズとライムのことはしっかり覚えており、雫世界を作る過程で記憶が封印されてもふたりの名前だけはしっかり覚えていた。
その他、記憶の中にボイスありで登場した前作キャラは更紗のみ。ちょっとさみしいが、これは前作ヒロインの中で更紗が頭一つ抜けていたという意味とも取れる。

前作プレイヤーとしてはさらひな熱いよなあと考えていたが、本作の愛央がめちゃくちゃ強い。
筆者は2周目のエンディングのときに日菜子を選んでしまい、ひなあおの可能性を見てしまった。なんてことだ。
日菜子の象徴は星7で、変身時のエフェクトにもそれが現れている。
それに加えて、エンディングの「誰より光る私の一等星」と来たら、ねえ?

表情周りのグラフィックが進化した影響で、前作では見られなかった日菜子が見られるのも嬉しいポイント。
お風呂好き設定が活かされたり、ちょっと抜けてるところがある性格が強調されるシーンも目立った。かわいい。

戦闘面では、最重要要素であるエーテル回復速度とコンボ数稼ぎに優れるため、とりあえず彼女が外せなかった。
HP的にはやや打たれ弱いステータスだが、カーテンなどでいかようにも補える。

CVは前作から引き続き、高田憂希。
前作から続けてプレイしたため、筆者としては彼女の声を聞いた瞬間からテンション爆上がりであった。

久野きらら くの きらら

小柄な不思議ちゃん。
ちょっと大仰で古めかしい言葉遣いがかわいい。

キャライベントではだいぶ愛央に懐いている。オタク的なノリが合うようだ。

勇希同様、非戦闘員。元の世界の所属組織でも詩帆とは違ってリフレクターではなかったのかもしれない。

CV大野柚布子。このはな綺譚の柚の人。
ソフィーのアトリエ2にはノーム役で出演予定。

平原陽桜莉 ひらはら ひおり

アニメBLUE REFLECTION/澪の主人公。
明るく真っ直ぐというか、一直線すぎて時折バーサーカー。
冗談が通用しないというか、言われたことをとにかく純粋に受け止めるアルティメット素直ちゃん。

澪で交流のあった瑠夏たちには全く言及しない。構成上仕方ないとは言え、ちょっとさみしいところではある。
その代わり、お姉ちゃん大好きっぷりが加速している。
教会を見た美弦の「結婚式ができそうね」に対して「する?」はずるいでしょ。山田が黙ってないぞ。

戦闘面では属性を2種類扱い、しかも有効範囲の広い歪曲がメインウェポン、かつ、弱点攻撃時に自己回復するのでマジでバーサーカー。
澪では使われなかった、剣が分離して二刀流になるタイプの武器だが、瑠夏の剣を受け継いだとかだろうか。

CV石見舞菜香。ウマ娘のライスシャワーの人。

平原美弦 ひらはら みお

陽桜莉の姉。
姉妹揃って、記憶を失っても互いのことは覚えている。
日菜子がユズとライムを覚えていたのが、原種戦争で願いを叶えた結果としての例外措置であったとするなら、この姉妹の絆はそれに匹敵するレベルということになる。すごいぞ。8

澪では敵サイドにいる期間が長かったが、本作でもそれを引きずっているようであり、何かと陽桜莉の世話を焼きたがる。
その結果、妹離れしろと言われてショックを受けるなど、澪では描かれなかったかわいいシーンも多い。

彼女が非戦闘員なのは、指輪の由来が紫乃だからだろうか。

CV上田麗奈。ハナヤマタのなる、このはな綺譚の礼、ロード・エルメロイ2世の事件簿のグレイ、わたてんのみゃー姉、恋する小惑星の萌、安達としまむらの永藤、MHXのネコ嬢カティ、リディー&スールのアトリエのルーシャの人。
筆者としてはみゃー姉やルーシャの、振り回される姉の声という印象が強い。本作でも陽桜莉や愛央に振り回される姉である。
ソフィーのアトリエ2にはエルヴィーラ役で出演予定。

駒川詩 こまがわ うた

澪でのマゾっ子ウタちゃんはどこへやら、記憶をなくした状態で現れた彼女は「キレイな詩ちゃん」であった。
澪を視聴してからのプレイであったため、初見の印象は「誰だお前!?」である。この状態の詩ちゃんを見た山田の反応が見たい。

本作の方針としてか、着地点の性格はだいぶマイルドになった。
ちょっと物足りない気もするが、流石に放置される状況すら喜ぶ無敵のドMを降臨させるわけにはいかないか。

記憶を失ったとは言え、刃物にときめいたりするなど、本質的な部分は残っているように見える。
陽桜莉に追われながらの「おわらています」のように、結構律儀なところがあって良い。9

彼女の記憶は祖母とひまわりのもの。
祖父母になかなか会いに行かなかった筆者としては、だいぶ刺さる内容であった。
ひまわりにおばあちゃんの顔がついているのはちょっと怖い。

愛央とのイベントにおいて、かなり救われている一人。うたあお(あおうた)派も結構いるのではないかという濃度になっており、百合として良かった。
でも筆者としては仁菜ちゃんを諦め切れないところがあり、ちょっと複雑。

ところで、スマホに山田センパイコレクション10は残っていたりするんだろうか。

本作では非戦闘員。ユズとライム経由ではなく、別ルートでリフレクターになっていたからだと思われる。

CV田辺留依。はいふりのかよちゃんの人。

ユズ

最初は謎の少女ユーコだった。
かなりテンション低めで警戒心バリバリの状態から始まるので、前作プレイヤーとしては戸惑った。

記憶が戻って本当に安心した。

なお、記憶が戻る前も「わたしはユーコちゃんじゃない」「おいしそうだったから、つい」などと、本質的な部分は変わってなさそうである。

ライム

だいぶ終盤に目覚めるため、本作ではかなり出番少なめ。
リフナビのログを見たときの反応が好き。

サブタイトル

本作でもサブタイトルはオシャレになっているが、前作よりは意味が取りやすくなっているものと思われる。
サブタイトル表示の演出もオシャレなので、見ていて楽しかった。

Chapter0 果てなき青

果てのない青空か、学校の周りを取り囲む水の色のことだろう。
そして、2周目に来て初めて、愛央が果てのない繰り返しにとらわれていることに気づく、良いサブタイトル。

Chapter1 想い、陽炎に揺れて

何か元ネタがありそうなサブタイトル。
夏の日差しのもとで記憶を取り戻していく始まりを表すタイトルだろうか。

Chapter2 急行思い出発あの日行き

これもまた元ネタがありそう。極めてオシャレで、好きなサブタイトル。
詩帆が日菜子と電車に乗って遠くまで行ったあの日を思い出す、という意味だろう。

Chapter3 もう一度踏み出すために

このサブタイを見た瞬間、筆者は絶対に日菜子でしょと確信した。
踏み出す、は前作における重要ワードである。

Chapter4 星を見に行こうよ

星の見える丘に勇希を誘った伶那の話。

Chapter5 逢魔が時に響くのは

きらら登場回。夕方要素はなく、いったいどういう意味であったのか不明。

Chapter6 絡まる糸 ささやかな祈り

平原姉妹登場回。これもちょっとストーリー的に意味を見出しにくい。

Chapter7 歪み

詩登場回。まあ、あの詩は歪んでるよね。

Chapter8 天の川に願いを

元ネタは星に願いを11だろう。
勇希のココロトープが出てくる回。伶那の回と対応するサブタイトル。
最深層は伶那のココロトープ同様、星が見える丘だった。

Chapter9 方舟

雫世界をノアの方舟に例えたもの。

Chapter10 リフレイン

愛央が繰り返しているということを示唆している?
日菜子にしてみれば、ユズとライムとの別れを繰り返すことになる。

Final Chapter 夏の終わり

どれだけ楽しくても、夏休みはいつか終わるものである。

システム

スピード感を増したタイムラインバトル

ライザのアトリエシリーズの戦闘に近い形式。

本作ではタイムライン=エーテルとなり、エーテル回復が最重要項目となった。
エーテルが1000以上たまると行動することができ、ギアによってエーテルの上限値は変わる。
スキルを使うとエーテル回復速度が伸び、ギアも上がっていく。
こまめに行動することでギアを上げていくか、エーテルを溜めてから連続攻撃してノックダウンを狙うか、ボス戦では考えて選ぶ戦闘ができ、なかなか楽しい。

筆者は最終的に、コンボ稼ぎからのエーテルタイドorレゾナンスタイドを主体とする戦い方をよくしていた。
インファイト主体でも面白いので、フラグメントの装備を調整して色々試すのも良いだろう。

偏った属性システム

属性の名前が覚えにくいのは前作同様。
今作では斬撃・貫通・衝突・震動・歪曲の5属性。
体感として歪曲弱点が多く、詩帆と陽桜莉がやや優遇気味に感じる。
貫通をコンスタントに扱えるのがこころのみであるなど、偏りもあった。

ただ、基本的にそのキャラクターのココロトープではそのキャラクターが有利になるように設定されているのは良かった。
加入後しばらくは有利になる仕組みだったのか、最後に加入する戦闘メンバーの陽桜莉が有利な期間が長かったように思う。

デートシステム

各キャラクターについて、ストーリーが進行したり、施設を立てたりすると愛央からデートに誘うことができる。
デートすることでフラグメントとタレントポイントが獲得でき、タレントスキルを覚えたりタレントレベルが上がったりする。

デートの目的地ではキャラクターイベントを見ることができ、愛央はみんなとイチャイチャする。
このシステム自体は百合として大変良いと思うのだが、キャラクターの強化に必須な要素であり、誰かひとりに操を立てようとすると途端にゲームの難易度が跳ね上がる。12

好感度が上がってくると、デート時に手をつないで歩くことになる。良い。

しかしながら、伶那や勇希を誘って同じことをするとなんだかNTRのようで少し気が引ける。

フラグメント装備

前作と違い、フラグメントはキャラクターごとに装備枠を持つようになった。
装備枠の数はタレントスキルによって増やすことが可能。

今作では周回でフラグメントが引き継がれるので、エーテル回復速度系を人数分溜めるととても快適になりそう。13

エーテル回復補助系は単純に強いとして、ほかは戦術によって付け替えると良い。
サポーターに置きっぱなしにするキャラがいるのであれば、サポート強化で固めるとか、インファイトを使うならノックダウン特化とインファイト補助系に偏らせるとか、タイドを使っていくならコンボ数加算やクリティカルを乗せていくとか。

フラグメントはデートで入手可能だが、デートイベントの選択肢によって2種類のフラグメントどちらかが手に入る。
効果が微妙に変わるものもあるが、あまり大きな差ではないので、コンプリートにこだわらなければどの選択肢を選んでも良い。

タレントポイント

デートしたり、キャラクターからのお願いを聞くことでそのキャラクターと愛央のタレントポイントを獲得できる。
タレントポイントを消費してタレントスキルを習得でき、タレントスキルには前述のフラグメント装備枠拡張や、単純な能力強化、施設の恩恵効果アップ、工作の補助スキルなど、様々な種類がある。

1周で全て習得するのは不可能だが、周回プレイ時に全キャラクター、半分のポイントを引き継ぐため、2周目で全て習得することは可能。

学校魔改造計画だ!

勇希の提案により、学校に様々な施設を作っていく。
メインストーリーの進行に必要な施設もあれば、メンバーからのお願いによって作れるようになる施設もある。
施設を作るとデートスポットが増えたことになり、対応するメンバーをデートに誘える他、戦闘中に有利になるような効果が得られる施設もある。

個人的に、DLC施設のナイトプール周りのイベントはちょっとはっちゃけていて楽しい。

工作

拾った素材を使ってアイテムを作れる。言ってしまえば、アトリエである。
施設のための中間素材を作ったり、回復・バフ・デバフアイテムを作ったりすることになる。
戦闘補助のアイテムは作成をサボると難易度が一気にあがる。しっかり作っておこう。

序盤は特に、中間素材用の砂粒が不足しがち。
こころと伶那の波風スキルを早めに習得しておきたい。

回復アイテムとしては全体回復のラタンバスケットが割と一強。
単体回復であればサンドイッチやおにぎり等、作りやすいものをいくつか常備しておくといざというときに対応しやすい。
麻痺対策に状態異常解除の紅茶コーヒーやエナドリを用意しておくのも良いだろう。

バフアイテムは、日菜子の適度な緊張感を付与しながら全体の防御を補助できるアイテムが強力。
筆者は神秘のカーテンをたくさん作った。

デバフアイテムとしては、攻撃力ダウンつきのフラッシュボムが活躍する。
ボスは基本的に単体なのでフラッシュボムだけあれば良いが、まれに取り巻きを連れたタイプがいたり、平原姉妹のココロトープのボスは2体いるので、そのために全体効果の激臭ガス爆弾を持っていっても良い。

ステルスミッション

本作の残念ポイント。敵の視界に入らないように隠れて目的地へ到達するのが目的のミッション。
本作ではダンジョンマップでジャンプできなくなった代わりに、同じボタンでしゃがんで、敵の感知範囲を可視化することができる。

Ghost of Tsushimaのような感じで隠密行動をすることになるのだが、あちらと違って本作には闇討ちが存在しない。

見つかると即チェックポイントに戻されるのは同じで、敵の動きは固定の巡回ではなく、ランダム。

終盤、特に詩のココロトープあたりまで来ると顕著だが、敵が後ろを向いた間に通り抜けようとして、スッと敵が180度回転して見つかる、なんてケースがザラにある。
お願いを消化しないとタレントポイントがもらえないため、とりあえずクリアはしておきたいのだが、やっていてとにかくストレスがたまる。

何度闇討ちさせろと思ったことか。

難易度選択

前作同様の難易度選択がある。DLCでMUST DIEが追加されたが、筆者はそこまでやっていない。
アイテム工作をサボらなければ、NORMALは余裕。逆にサボってしまうとNORMALでもしんどい。

強くてニューゲーム

クリアデータをロードすることで、全キャラクターのタレントポイントを半分と、所持フラグメントを全て引き継いで2周目を開始できる。
タレントポイントをしっかり稼いでおけば余裕をもってスキルを覚えられ、1周目よりもだいぶ気楽に進めることはできる。
ただし、工作をサボったりしてアイテムを用意しないと詰まる箇所はある。

2周目の目的はやはり再会を願う想いを持った状態でのエンディング変化だが、分岐ポイントがかなり局所的で最終盤にしかないため、人によってはモチベーションが続かず折れてしまうかもしれない。
2周目のエンディングを見てこその本作なので、ここはかなりもったいないポイントだと感じる。14

やりこみ

トロコン

ストーリークリアや工作、学校開発、デート、お願いをやっていれば特に難しくない。
エーテルタイドは木人作成可能時点では習得が難しく、1周目は習得イベントを見逃してしまうかもしれない。
また、封鎖してある道をアイテムで切り開くも割と見逃しがち。

全員のタレントレベル最大は、2周目必須。

ロケーションコンプリート

トロフィーの中で最も注意すべきなのがロケーション。
ココロトープの中で特定地点へ行くとミニイベントが発生するが、それをすべて発生させる必要がある。

このイベントは時期限定であり、基本的にココロトープが出現したchapterで行う必要がある。15

特に、勇希のココロトープでボスを出現させずに奥まで行く必要があったり、詩のココロトープで、ボス撃破後ストーリーを進める前に最深部まで行く必要があるところを見落としがち。

フラグメントコンプリート

前作同様、選択肢によってもらえるフラグメントが変わるため、すべてコンプリートしようとすると2周は必要になる。
また、DLCでフラグメントが追加されているようである。

南の島DLC

DLCで追加されたマップ。
追加ボスが出現し、撃破ごとにフラグメントがもらえるとのこと。

総評

日菜子たちのしっとりした夏から4年。久しぶりに日菜子、ユズ、ライムに会えたのがすごく嬉しかった。
ゲームテンポやシステムを進化させ、遊びやすくなっているのも良い。

シナリオはこれまでの作品をまとめつつ、次にリリース予定の燦につなげるものであったのだろう。やや説明的な部分は多かった。
それでも全キャラクター輝いていたし、何より主人公星崎愛央をここまで深く愛せたのだから、良いシナリオであったと思う。
伶那と勇希でガッツリGLをやってくれたのも良かった。

今、筆者は良いゲームを終えた後に特有の寂寥感と満足感が入り混じった想いを噛み締めている。
夏休みは終わったのだから、前を向いて踏み出さなければ。


  1. 探索中1回+ボス戦時のみ見る設定。
  2. 詩の通り魔の過去の場面だけ、場面に不釣り合いな日常系の曲「わたしたちの日々」であったのが気になったが、かえって不気味な雰囲気になったのでこれはこれで良いのかもしれない。
  3. サントラでは、TIEもTIEDも蝉の声入り。
  4. ただし、本人にその自覚はない。
  5. 「嘘つきだけど誰よりも優しいあなたが好き」
  6. 膝の故障前かつ、詩帆の転校より後で、詩帆の記憶の時系列からするとおそらく当時中学生。
  7. エトワール。
  8. 陽桜莉のフラグメントを分けてもらった設定があるので、その関係かもしれない。
  9. 澪で山田センパイからの着信をそっと切ったシーンも、詩の本質的な律儀さの表現だったのかもしれない。
  10. 山田仁菜の罵倒ボイスを集めた自家製かつ詩専用のASMR(?)作品。澪ではこれを聞きながら気持ちよくなっているシーンがある。やべーよ……。
  11. When You Wish upon a Star。
  12. 愛央は確かにみんなに愛されるキャラとして描かれているから、フレーバー的にもこういうシステムになるのだとは思うが。
  13. そのための周回数が多すぎて現実的ではないかもしれないが。
  14. スマホを落とす演出からオープニングへのつながりがとても良いので、そこを見せるためにも最初から始めてほしいというのはわかるのだが。
  15. 詩のココロトープのみ、最深部のロケーションはChapter10にならないと行けない。