【ゲーム感想】Fate hollow ataraxia

目次

  1. 前置き
  2. グラフィックス
  3. サウンド
  4. シナリオ/キャラクター
    1. 衛宮士郎
    2. バゼット
    3. アヴェンジャー
    4. カレン
    5. 間桐桜 / イリヤスフィール
    6. 英霊達
    7. ステンノとエウリュアレ
  5. 一成
  6. システム/やりこみ
  7. 総評

前置き

筆者はFate/stay nightのみプレイ済み

本編に関するネタバレを含むので閲覧には注意されたい

グラフィックス

stay nightとほぼ同じ
だが、追加衣装がそれなりのバリエーション用意されており、なかなか新鮮な姿を見ることができる

真面目テイストのイラストもかっこいいが、ファンディスクという性質からかギャグテイストのものが多く見られた

真面目調ではクライマックスの各々が本当にかっこいいし、ランサーとバゼットのツーショットがとても良い
釣りをするランサーと後ろにドンドン増えていく野郎英霊共も楽しかった

そして何と言っても、天の杯へ至る道中のカレンの美しさ
風に舞い輝く銀の髪は夜空に流れる星の川そのもの

新しいグラフィックも、stay nightの頃とは違う明るい感じのものが多くて新鮮で良い

サウンド

ファンディスクらしい明るい曲も勿論のこと、シリアスパートの曲がいちいちゾクゾク来る
back to the night、stranger、偽りの輪廻辺りが好き

シナリオ/キャラクター

stay nightの後にやると、「このくらいがちょうどいい」と感じる長さ
ファンディスクでこのボリュームか、と思うほどしっかり練りこまれて読み応えのあるシナリオだった

stay nightでは報われなかったヒロイン達の幸福そうな姿をいきなり見せられて混乱したが、昼間は問答無用で平和な優しい世界を見せられるので、なんとなく順応させてしまうのがこのシナリオのスゴイところ
かと思えば夜は夜でこの冬木市の四日間のナゾを少しずつ暴いていくサスペンスで、早く続きを読ませろと思うほど面白い
四日間を繰り返すムジュラの仮面めいたスタイルなので、日付や時間の経過で一区切りつけられるのも、睡眠時間を削らない良い形式だった

昼間の平和な世界もこれはこれで好きだが、夜の聖杯戦争が面白すぎる

衛宮士郎

とにかく、このシナリオで一番不可解だったのはコイツである
ヒロイン達に焦点を当てているからか昼間はさほど目立たないタダのハーレム系主人公かと思いきや
夜になると途端にその異常性が表に出てくる

プレイヤーの視点=彼の視点というような一人称視点の作りにしておきながら、夜の彼を信頼出来ない語り手にしたのは良い演出だった
これのおかげで、昼間の混乱を解決すべく夜の街を調査しているはずなのに更に混乱が深まる
混乱が深まるのだが、プレイヤーに対しては何かしら彼が異常を抱えていることがわかるので、続きを期待させるうまい作りになっている

昼間の教会でカレンに会った段階からもしやとは思っていたが、そういうことだったかという感じ

四日間で死ぬが、四日間は生き延びるのでアドベンチャー界のスペランカー的な雰囲気はだいぶ薄まっている
スペランカーではなく、今作の彼はウスバカゲロウだろうか

バゼット

容姿/性格上さほど個人のツボには入らず、なんだかこの世界観に対して微妙に噛み合わないキャラクターだと感じた
それがなぜかは、終盤のストーリーで明かされ納得した
彼女はとにかく、stay nightの猛者共に比べて精神的に弱く脆いのだ

hollowはそんな彼女が弱さを抱えたまま強くあろうと再び走り始める物語だとわかった途端、良いキャラ付けがされていると感じた
最後までやった今では、単体ではやはりさほど好きではないものの、アンリとのコンビはとても好きになった

hollowは最後まで彼女のための聖杯戦争だったし、彼女のための長過ぎる四日間だったのだ
背中合わせから走り出すシーンでは、単体でさほど好きなキャラでないにも関わらず、その行く末を応援したいと思った

アヴェンジャー

こいつも正直な話、単体ではそう好きなキャラクターではない
粗野な性格をしておきながら声は優しく、単に悪ぶっているだけに聞こえてしまったり
なかなか姿を見せず、終盤は彼の視点で進むのでちょっとした嫌悪感さえあった

ところが、カレンを欲しいと思ったりバゼットを本気で立ち直らせようとする姿勢は好きだから困った

カレン

恐るべし被虐霊媒体質
キャラ造形から声から性格から設定から、画面を超えて筆者の心の中に救う悪魔を全力で呼び起こしにかかって来おる
聖痕で苦しんでいる姿も、なんというかこうたまらなく嗜虐心をソソる
極めつけが首を噛まれる例のシーンである
おそらくPC版原作では年齢制限がついていたであろうシーンは、行為こそおとなしいものになっているが声だけ聞いてしまえばCERO仕事しろ案件そのもの

賢者の心で見れば、照れた表情がとにかく可愛い
百合堕ちしたらすごい輝きそう

間桐桜 / イリヤスフィール

この二人がひとまとめになっているのは、声優の演じ方がstay nightと全く変わっていて驚いたから
門脇舞以のほうはやや声が低くなっただけなので演じ方を変えた(あるいは変わってしまった)だとすぐにわかったが、桜のほうは最初本当に中の人の変更を疑った

結論から言うと、意図された演じ分けであったかどうかは不明
Realta Nuaから2年後の発売であり、作中で明確な説明もなかったので意図しないものなのではないかとも考えられるし
しかし作中世界観での彼女たちの立ち位置からしてstay nightと同じ演技ではダメだという判断がされたのかもしれない

ともあれ、stay night直後にやると違和感があるものの、ふたりとも終盤になる頃には慣れてしまった

英霊達

クライマックスの熱さが半端ではないので、未プレイの人はぜひともそこまでやってほしい
凛とアーチャーの赤いコンビとか、クズキと共闘する小次郎とか、全て知った上でめちゃくちゃ頼もしい味方になってくれたキャスターとか
最古の英雄王の威厳を見せつけてくれた金ピカとか、冷静で身も蓋もないライダーとか

野郎どもはコメディの展開もキレがあって好き

ステンノとエウリュアレ

ライダーの姉たち
とにかくシンデレラめいていてただの嫌な姉たちだと思いきや

あのシーンはずるい
最高の姉妹愛でございました

一成

あの絵を見た瞬間、声を出して笑った

システム/やりこみ

四日間、マップ上の好きな場所を回ってフラグを立て、四日目の夜に死んで一日目からフラグを引き継いでまた始める、の繰り返し
シナリオはそれなりに細切れになっていて、プレイ時間はstay nightとは比べ物にならないほど短い

選択肢ごとにセーブファイルを分けるようなオーソドックスなアドベンチャーではなく、何度も繰り返してフラグを立てる必要がある
ルートごとに共通テキストを読まされたりと言ったことがないし、未読イベントのある場所はマップ上にnewと表示されるのでとても親切
シナリオフルコンプリートは面倒だが、stay nightと違ってシナリオを完全コンプしなくてもトロフィーコンプリートはできる

しかし、このゲームの恐ろしいところは、内包されているミニゲームにある
風雲イリヤ城はアイテムコレクションを全て集めなければスペシャルCGが見られず
カプセルさーばんとの中毒性は散々言われている通り

特にカプセルさーばんとはかなりコストがかかったゲームで、これ単体でロープラスで販売されていてもおかしくない出来であり、シンプルながら延々と遊んでしまう
幸いにしてトロフィーコンプには影響しないが、これらをやり込み始めると下手をすればstay nightよりも時間を喰うかもしれない

また、カプさばだけを目的にこのゲームを購入するのはオススメできない
本編で必要なフラグを立てなければ遊べないからだ

総評

昼間の優しい世界と夜のガッツリしたシナリオを読めるのでかなりお得だが、やはりファンディスクという性質上stay nightをやっていないとわからないことが多すぎるだろう
また、zeroのものらしきネタがたまに出てきたりするので、そちらも知っているとより楽しめるのかもしれない

シナリオ本編はかなり綺麗に爽やかに終わってくれるので、読了後の後味も良い

stay nightのストーリーとキャラクターを知っていて、そのキャラクターたちの平和な日常や新たな物語を夢想する方にはオススメ
各サーヴァントの掘り下げが大変よく作りこまれているので、stay nightをやったならぜひこちらもやってほしい

カプさばの時間泥棒性能には注意されたい
……FGOを預言してたんだろうか