【アニメ感想】劇場版 遊☆戯☆王 THE DARKSIDE OF DIMENSIONS

目次

  1. 前置き
  2. 社長のための物語
  3. DM視聴者へのファンサービス
  4. 社長の心理
    1. その後の社長
  5. おい、映画の話しろよ

前置き

まず、映画のネタバレを含む
ですので、それが嫌な場合はこの記事を読まないように注意されたい

筆者は前日譚漫画を読んだわけではなく、公式の世界観に精通しているわけではない

社長のための物語

この映画は、終始海馬瀬人のための物語だった
遊戯王アニメDMの最後、戦いの儀で自らの宿敵と戦うことすらできず、ただ指をくわえて見ているだけしかできなかった男の、執念の物語だった

訓練された遊戯王アニメ視聴者なら、「あ、社長ならこうするな」と予想は付く
だが、予想していても面白い、あるいはその予想を上を行くのが海馬瀬人という男
ソリッドヴィジョンの時点でオーバーテクノロジーも甚だしかった海馬コーポレーションは、アニメDM終了時の時間軸からわずか1年で宇宙エレベータを完成させ、
自らの脳波を読み取り、また脳に刺激を与えることで記憶の中の決闘者を投影して決闘するという次世代どころか数百年は先の技術を完成させてしまった

何が彼をそこまで突き動かしたかと言えば、それは勿論、名も無き王の魂との血液を沸騰させるほどの戦いだ

はっきり言って、オリジナルキャラのあいがみ君はおまけのようなもんである
セラは可愛かった

DM視聴者へのファンサービス

当時、遊戯や海馬が使っていたモンスターのリメイクモンスターが多数登場する
よりかっこよく、より強力な効果を持って登場するモンスターは、ムービーパックにも収録されている

童見野高校の連中の卒業式と未来の道筋が垣間見えたり、1カットだけアルティメット城之内君が出てきたり
本編で使われたBGMがより豪華にアレンジされて使われたり、意外なアイツがキーキャラクターになっていたり
戦いの儀のワンシーンが新規に描き下ろされ、オシリスがめちゃくちゃかっこよくなっていたり

随所で言われている獏良の過去も、良い補完

社長の心理

これを深読みすることが、おそらくこの映画の一番楽しめるところ
オカルトを嫌い、否定していた彼が千年パズルというオカルトに頼らざるを得なかったのはどれほどの屈辱だったのか
そして、心の底では遊戯と戦う前から王の魂を呼び戻すことなどできはしないと知っていたのではないか

視聴者からはアテムは顕界して遊戯を助けたように見えたが、実際はそうでなかった可能性もある
それを踏まえて社長の「そいつはどうかな」を聞くとまた彼の心境の変化が見えてくる
真実、アテムの魂を呼び戻すことなどできはせず、遊戯やディーヴァにとってそう見えただけだったのではないか
ディーヴァ自身も言っていた「人々の認識が世界を作る」の通り、トランス状態に陥った遊戯を本人でさえもアテムと認識してしまった可能性は十分に考えられる
それを(姿が消されてしまったとは言え、どこかで)一人冷静に見ていられたのはおそらく海馬瀬人ただ一人だけだろう
遊戯や城之内が「話をした」とだけ言って内容を語らなかったのは、「話をした」という認識はあるが、話の内容を認識していなかったから

何より、ラストを占める海馬の「貴様が来ないからこのオレが直々に出向いてくれる」と言わんばかりのアレ
ここからは個人的な希望に過ぎないが、彼ならそのくらいやりかねないし、そういう男であってほしい
実際に本物の前に辿りつけたかというと怪しいところではあるが、辿りついて戦ってほしい
ここまで来ると、アテムと戦えるだけで彼にとって報われたということになる
勝敗などどうでもよく、自らの血液を沸騰させるほどの相手と再びまた戦えることだけが、彼にとって望みとなっている節さえある

その後の社長

いくらかパターンが考えられると思う

  • 生涯をかけてアテムに挑み、結局戦うことすらかなわずに終わる
  • 生涯をかけてアテムに挑み、どこかで決定的な敗北を味わうことでアテムには勝てないと思い知る(だが挑み続ける)
  • 生涯をかけてアテムに挑み、結局帰ってこない(戦えたのか、勝てたのかはわからない)
  • アテムに挑み、ある日彼とは絶対に戦えないと思い知り、受け入れてしまう(もう挑まない)

あの名も無き王の魂に人生を狂わされているのは確かで、彼自身その事実に対して決着をつけようと躍起になっている
アテムとの決着がつけられるかというとそうとも限らないが、自分の心との決着をつける未来は十分に考えられる
あんなナリだが彼はまだ高校生(映画終了時に卒業?)だし、周囲や視聴者が神格化するほど成熟していない部分だってあるはずだ

そういった未熟な部分に対して決着をつけてしまえば、それ以前の豪胆さはなくなってしまうかもしれない
そんな、ある意味枯れた海馬瀬人を見た覚えがある
アニメGXの海馬瀬人だ

決してGXに繋がる映画ではないとも言われているが、ここからGXに繋がる未来だってあり得る
デュエルディスクの劣化には、安全性や量産コストの問題が立ちはだかった可能性を考慮できないわけではないし、
GXにちらっとだけ出てきた、どこか穏やかになってしまった社長はもうどうあがいてもアテムに勝つ(アテムと戦う)ことはできないと受け入れてしまった存在のようにも見える

彼にどんな未来があるのかはわからないが、筆者の心の中には、どこかで決着をつけてほしいという気持ちと戦いのロードを歩み続けて欲しいという気持ちが両方ある

おい、映画の話しろよ

とにかく社長のための作品なので、社長以外に語れることがさほど多くない
(多くないわけではないが、社長の印象が強すぎる)

杏の目の作画ちょっと変わってるなとか、風間君がちゃんと表の遊戯だけを演じつつ成長を感じさせてくれるなとか
モンスターのCGが総じてかっこいいなとか、1度見ただけではこの程度しか語れない
何度か見ればまた印象が変わりそうでもある

あと、ニコ動でコメント有りで見たら最高に楽しいなと思うので、将来生放送なりで皆でワイワイしながら見れる時が来るのも楽しみ

アニメDMを見ていた身としては、10年以上ぶりの映画館に行って本当に良かった