【アニメ感想】ジパング

目次

  1. 前書き
  2. 今、ジパング?
  3. イージス艦 太平洋戦争の只中へ
  4. みらい乗員他登場人物
    1. 角松二佐
    2. 菊池砲雷長
    3. 柳一曹
    4. 梅津艦長
    5. アスロック米倉
    6. 佐竹一尉
    7. 青梅
    8. 草加少佐
  5. 敵側も描いてくれる
  6. 熱いBGM
  7. 音声の質の乱れ
  8. みらいの戦いはこれからだ

前書き

Gyao!にて全話パックが販売されていたため購入して視聴

今、ジパング?

はいふりで完全にスイッチが入った感じ
兵装は勿論のこと、艦の運営に関しての描写が見られそうだったのでこのアニメを選択
(元々、米倉周りのネタだけ知ってはいた)

イージス艦 太平洋戦争の只中へ

萌えを追求した作品も好きだが、こういう男臭い作品も良いもんである
兵装を扱う人間が描かれていることを求めて選択した作品だったが、その予想を大きく上回る人の描写の濃さであった

命が呆気無く奪われる世界だからこそ、彼らが生きていることを強く認識できる
度々登場人物の口から飛び出す言葉が重く鋭く、そして熱い血潮を感じられるのだ

みらい乗員他登場人物

角松二佐

「俺達にとって、人間の流す血に違いはない。全て赤いんだよッ!」

めちゃくちゃ熱い男
その熱さが草加を炊きつけてしまい、そして草加に炊きつけられた彼もまた、なんとしてでも草加の野望を止めようと動く
因縁めいた関係なので、ともすれば腐った方向にも妄想が捗りそうではある

菊池砲雷長

「こいつをCICから叩き出せッ!」

冷静で観察力のある人物
月齢から自分たちがタイムスリップしたことや草加が情報士官であったことをいち早く見抜いた
冷静でありながらどこかに人一倍強い甘え(と言う名の、戦闘への抵抗)を持っており、それが取り返しの付かない損害を招くことになる
そんな彼が決断をするシーンや、決断した後に尾栗にぶつけた激しい感情も、本作の見どころの一つ
中の人は星野貴紀。遊戯王シリーズのジャック・アトラスと同じ

柳一曹

当時の実情にきわめて詳しい、いわゆるミリオタ
だが、彼はただの戦史オタクではない
ミッドウェー海戦に直面した時の反応は、自衛官として人命を救うべきではないかという気持ちと、何ができるわけでもないと理解している理性とで板挟みになっている、実に人間らしいそれだった

その後も解説役としてちょくちょく登場しており、憎めない奴である

当時の兵装の特性も理解しており、みらいの生存にかなり役に立っているのでは

梅津艦長

「専守防衛は平時のお題目ではない。我々の灯台だよ」

どっしり腰を据えて構えていてくれる年長者
彼の「良かろう」は緊迫した雰囲気を和らげてくれる
普段はちょっとゆるい感じの艦長だが、乗員のことはしっかり気にかけてくれている、理想の上司

アスロック米倉

「そんなに、僕達の、力が、見たいのか……ッ!」

閉塞的な空間に閉じ込められ、帰る場所を見失い漂流する恐怖からではあったが、殺さなければ殺されるという戦闘の本質に真っ先に気付いた人物
砲雷長菊池が戦闘の本質を理解するのは、この4話よりもずっと先であった

佐竹一尉

艦長に次いで肝の座った男
みらい初の殉職を目の前で見てしまい、その後の顔つきが痛々しい

「こいつを叩き起こして、それを説明してやってくださいッ! お前は軍人ではないとッ!」

しかしながら、その後も飛行を続けるのは年長者としての意地か

青梅

CICの主
このアニメにはいい声の男たちが多いが、彼もその例に漏れず
レーダーを見る彼の報告を聞くとほっとする

「やりたいことがやれる。これは生きている者の特権だ」

草加少佐

「生きているということは、知ることなのだ」
とにかく肝の座った食わせ者
頭がキレる上に人心を容易に操ってしまう恐ろしい男でもある

角松に救われてから、彼を騙しながらも彼に惚れ込んでいるような描写が時折見られる

敵側も描いてくれる

みらいという時代にそぐわぬ超兵器を前に、絶望する米軍側の様子も描かれている
実際にみらいと直接戦闘をしたハットンは、地獄を見てきたかのようにやつれてしまい、見ていられなかった

当時におけるみらいのモンスターぶりを表すには、ワスプ艦長の台詞が最適であろう

「もしも奴が、神や、悪魔ならずとも、人を越えた存在ならば、我々はどれほど救われたことでしょう」

正規空母ワスプを一撃で沈めたサジタリウスの矢
そして、そのたった一発の矢が引き起こした人的被害の甚大さに、最前線で戦う軍人さえもが、割り切れない恐れを抱いたのだ
矢を放った菊池の苦悩と同時に、放たれた側の絶望もしっかり描き切ってくれたのは本作の良さの一つであろう

熱いBGM

アスロック米倉が初回だが、その後も幾度と無く流れる「みらいの戦闘」がたまらなく熱い
戦闘を前にあっさりくたばってしまう人間の弱さと、その恐怖に立ち向かう人間の強さが両方混ざっている
メインを張るサックスやストリングスは勿論、キックもハットも曲を引き締めてくれて実に良い

音声の質の乱れ

Gyao!の配信映像ソースが良くなかったのだろうが、ところどころ音声がこもったりブツッと切れたりしていた
どこかに補完されていたビデオテープの中身を頑張って配信できるようにしたがこうなってしまった、という感じだろうか
BGMやCVが素晴らしい作品であるだけに、これはちょっともったいないと感じた
ニコ動であれば(綺麗とは言いがたくとも)もう少し良い質で配信できたのでは、とも思う

みらいの戦いはこれからだ

漫画7巻相当の箇所、草加の野望を阻止するべく角松がみらいを降り、満州に向かったところでアニメは終わっている
漫画版の評判を見る限り、その後を描かなかったのはある意味正解かもしれない

筆者個人としては「しっかり終わる作品」が名作だと信じている
その観点で言えばアニメ「ジパング」は「戦いはまだ続く」エンドであったのだが、不思議な事に消化不良感は薄かった
角松二佐の行動が行き当たりばったりであったり、一つ一つの難所を切り抜けることで区切りをつけてきたから、ちょうどいい区切りで終わった、くらいにしか感じなかったのだ

みらい乗員にも殉職者が少なからず出る等、かなりハードな作品ではあったが、漫画版は更にハードらしい
そのハードさたるや、字面で読んだだけでも「ここまでで止めておいてくれて良かったのでは」とすら感じるほど
みらいにとっては単純に消耗戦に他ならず、大日本帝国も消耗戦を続けており、なんというかダブルに見ていて辛くなっていくだろうという予感もある

名作の条件としては完結すること以外に、「余韻を残すこと」も重要である
この点で言えば、最後の草加の台詞は実に良かった

要所要所で良い演出、良い台詞が飛び出してくるし、艦の運営という見たいものもある程度見れたので満足している
海自式のイントネーションも良かった