【ゲーム感想】Fate/stay night [Realta Nua]

目次

  1. 前置き
  2. グラフィックス
  3. サウンド
  4. シナリオ/キャラクター
    1. 衛宮士郎
    2. セイバー
    3. 言峰神父
    4. ランサー
    5. イリヤ
    6. 臓硯
  5. システム
  6. やりこみ
  7. 総評

前置き

筆者は他のFateシリーズの知識をほぼ持っておらず、アニメ版はUBWのみ視聴済み
PC版やFGOはプレイしていない

原作は10年前のゲームなので問題ないとは思うが、本編に関するネタバレを含むため注意されたい

グラフィックス

2000年代の作品ということを加味しても絵柄にクセはあるが、個人的には好きなほう
致命的に気になる作画があったわけでもなく、当時の流行らしい実写寄り背景と二次元立ち絵の組み合わせに違和感を感じることもなかった
そういった意味で言えば10年前にプレイした原作版「ひぐらしのなく頃に」を思い出すつくりであったため、ちょっぴり懐かしい気持ちになった

元々がR指定のある成人男性向けのゲームだが、行為に及ぶシーンであったであろうイベントはさほど違和感無く置き換えられていたように思う

注目すべきはufotableが制作したOPアニメ
Fate、Unlimited Blade Works、Heavens Feelの全てのルートについて別々のアニメが用意されている
そのどれもが洗練された美しいつくりになっており、何度も繰り返して見たくなる
Fateの代名詞とも言える序盤のランサーvsアーチャーや、HFルートOPでの神父様が個人的なツボ

サウンド

世界観への没入を促す良いBGMが揃っており、vita版のOP曲も3パターンとも好き
剣戟の効果音だけやや軽い感じがしたが、これはこれで悪くない

戦闘のBGMはどれも熱く、しんみりするシーンはしっかり心を揺らしてくる
消えない想い、Sorrow、蘇る神話、Mighty Wind辺りがツボ

シナリオ/キャラクター

前々から聞いていた通り、長い
ひたすらじっくり、ゆっくり進めていく根気を要求される
とは言え、話の進み方が遅すぎるわけではなく、必要なことをじっくり描写しているが故の長大さ

Fate→UBW→HFという順番で攻略しなければならず、しかし前のルートで明かされた情報をダイジェストで描写してくれるので、ルートごとにプレイに時間が空いても大丈夫なつくりになっている
ただ、1つ1つのルートが非常に長く、特にHFは時間を開けてしまうと状況を把握するのに苦労するだろう

個性的なキャラクターは皆が皆、ある種の魅力を持っており、そしてある種の欠陥を抱えている

衛宮士郎

主人公
Fate及びUBWルートでは理想の中の正義の味方(に近い)精神性であり、嫌な言い方をすれば人間味を感じない部分がある
それらルートとHFとで、印象が大きく変わる
HFではソレ以外のルートと比較して好戦的に見え、より人間らしい彼を見ることができる

HFルートでの射殺す百頭後の一枚絵が、苦悩を越えて立つ人間の儚い強さを感じられて好き
人間らしさを手に入れた代償に人間性を捧げなくてはならなくなるこのルートが、彼の魅力を最も引き出していると思う

彼の男女観は(切嗣から受け継いだものかもしれないが)女の子は男が守るべしというやや古臭いものだが、作中での力関係は言うまでもなく
選択肢を1個間違うだけであっさり女の子に殺されるアドベンチャー界のスペランカーである
各ヒロインに作中通して5回ずつくらい殺される主人公というのも、実は珍しいのではなかろうか

実はすごい力を秘めていました系の主人公ではあるが、それも彼の生い立ちや積み重ねてきた鍛錬の上に成り立つものであるという描写がしっかりしているため、さほど嫌悪感はない

セイバー

クールで真面目、デレ成分が少なく、しかしわずかに覗いたそれの破壊力たるや、まさに約束された勝利のヒロイン
士郎は彼女に対して誠実であろうとするが、それもそのはず
彼女自身が、誠実が服を着て歩いているような存在だからだ

王の剣を抜いた瞬間から、あるいは、それを抜く決意をした段階から人間にとって必要なはずの大切な何かを失った
それが彼女の抱える欠陥であり、指導者の素質であり、臣下から言われた「人の心がわからない」の正体である
最近の作品の言葉を借りれば、何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人はきっと大事なものを捨てることができる人だ

目的のために大切なものを切り捨てるという姿勢はアーチャーと変わらないはずだが、その目的が私利私欲にまみれたものではなく、全て祖国のためであるというところが彼と決定的に異なる
自己を顧みない姿は士郎の映し身でもあり、アヴァロンとは別にそういうところでも士郎に引き寄せられていたのかもしれない

プレイ前に感じていた、さほど笑わない鋼鉄の女というイメージはプレイ後完全に覆った
人並みに笑ったり怒ったりする姿は普段は抑えているからか珍しいのだが、そういう彼女だからこそ、零れた笑顔や拗ねた姿に魅力があるのだ

ツンデレの典型
優等生ヒロインが凡庸な主人公を前にして調子を狂わせる馬鹿一が好きな方にはたまらないキャラクター

強かな女性というものは、それだけで魅力的なもの
その中に優しさまであるとなれば、これはもうモテないほうがおかしい

周りが何かしら欠陥を抱えてぶっ飛んだ連中ばかりなのだが、彼女は作中で最もまともな人間なのでは

ヤンデレの典型
HF以外の2ルートでは空気同然だが、HFで彼女の壮絶な真実が明かされる

日常の象徴であった彼女の笑顔が徐々に陰り、闇に堕ちる過程が非常に美しい
ルート終盤で凛と決着がつくシーンは、王道オブ王道でとても素晴らしい

筆者の友人はtrueで彼女に報いがないことを嘆いていたが、むしろ彼女は報いの前借りをしすぎていたのでは、という感じがする
彼女がしっかり笑えるようになるtrueは、とても安心する終わり方だった

言峰神父

作中で最も好きな神父さん
中田譲治の渋み満点ボイスも、おしゃべり好きなお茶目さも、自らの目的のために何の迷いもなく周囲を利用し犠牲にするゲスさも全部ひっくるめて好き

HFで語られる、人間として致命的な欠陥を抱えつつ、尚且つ最も人間らしく苦悩する彼の美しさがとても良い
そのうちzeroでの彼の活躍も見てみたいところ

ランサー

神奈さんボイスからしてたまらないのだが、その上高潔な豪傑とあれば好きにならないはずがない
作中でも言われている通り本当に「気持ちのいい男」で、凛と並んで最もまともなキャラクターの一人

凛ルートでアーチャーと再戦するシーンの、「オレが知ってるわけねえだろうが」が最高
hollowで釣りを楽しむ彼が見られるのが今から楽しみ

イリヤ

可愛い見た目してエグい子かと思ったらやっぱり聖女だった
悲しいかな、彼女が幸せに生き続けるルートが存在しないので、hollowで何らかのフォローを……!
(Fateルートでも、彼女の体の仕組みを考えれば長生きはできないと考えられる)

臓硯

HFでしかお目にかかれないジジイ
このクソジジイ、と何度憤ったかわからないが、同時に目的のために手駒を最大限利用する姿勢には好感を持った

外道にしては綺麗すぎる終わり方だったので、桜よりもむしろこちらに報いが必要だったのでは、という気もしてはいるのだが、悲しいかな
この外道が最後にイリヤを通してユスティーツァを幻視し、全てを受け入れるシーンがとても良い
500年かかってようやく受け入れた彼の、純粋に情熱を燃やしていた過去を見てみたくなった

システム

選択肢を選んで読み進めるだけ
UI周りはしっかり整備されていて特に不自由することはない

たまに「DEAD END」の文字が画面外に見切れることがあったが、プレイ環境による問題か?

いかんせん本編が長すぎるので、スキップ機能を使っても次の選択肢にたどり着くまで時間がかかるのが難点といえば難点

やりこみ

全エンディングやタイガー道場コンプはさほど難しくもないが、シナリオコンプリートが面倒
flowchartで未読シナリオを可視化してくれていなかったらさじを投げていただろう

flowchartを見ても好感度による分岐条件はわからないので、攻略サイトを頼ることになった

総評

めちゃくちゃ時間がかかる(筆者は少しずつやって3ヶ月かかった)ので、アニメを見て要点だけ抑えるでも良い気はする
Fate、UBWルートはそれぞれ2クールのアニメになっている

2017年にHFが映画化するらしいので、それも出揃えばstay nightの全てをアニメで見れることになるだろう

ただし、アニメにはない良さがこちらにもあるので、アニメを見て気になった人はぜひプレイしてほしい
聖杯戦争やその他についての細かい設定が随所に散りばめられており、世界観がかなり掘り下げられている