【アニメ感想】超かぐや姫!
目次
前書き
本記事には超かぐや姫!本編に関わるネタバレを含みます。
筆者は本作を劇場で見てきました。11回見ただけなので色々と記憶が抜け落ちていますが、覚えている限りで書きます。
筆者は本作について、アニメを見たのみであり、小説版・マンガ版・公式ガイドブック等の追加情報は、本記事執筆時点ではまだ得ていません。
作品概要
百合です。
ボカロ黎明期を駆け抜けた制作陣による、現代版竹取物語、というのが本作を端的に現す言葉だと思います。
かぐや姫は帝とはくっつかないし月にも帰るけど、最後は帝の妹とくっついてハッピーエンド。2最高ですね。
超人JK酒寄彩葉が、七色に輝くゲーミング電柱の中から赤子を見つけます。
連れ帰った赤子はすくすくと3育ち、彩葉と同年代の女の子になりました。
よくわからん宇宙人に振り回されながらも、いつしか彩葉は彼女に惹かれていき……というのが、本作のあらすじです。
そうはならんやろ なっとるやろがい!
まず、本作は「そうはならんやろ」の塊です。
原作であるかぐや姫からして、
- 竹から赤子が出てくる
- じいさんばあさんが生きてるうちにすくすくと育つ
- 名だたる有名人、果ては帝にまで求婚される
- 結婚したくないからと無理難題をふっかけて追い返す
- お迎えが来たから不老不死の薬を置いて月に帰る
- 帝がそのお薬を燃やす4
と、めちゃくちゃな展開です。
これを踏まえれば、本作における「そうはならんやろ」もある種原作再現なのかもしれません。
超人JK 酒寄彩葉 (いろは)
最初の「そうはならんやろ」ポイントです。
彩葉は超人です。
- 親に反発して家を出て、高校生の身で一人暮らし
- 生活費と学費をアルバイトして自力で稼ぎ、その隙に寝る間を惜しんで推し活5
- 学業もおろそかにするどころか文武両道成績優秀、目指すは東大
- 作曲の経験があり、作中でも存分に発揮される
出来杉君も真っ青な超人ぶりです。どうなってんだ?
序盤の彼女の描写を見て、真っ先に感じたのは「死ぬぞ」でした。その過酷なスケジュールで、更に睡眠を削って推し活は、ヤバい。6
なお、これに加えて、ストーリー中盤ではマンションの部屋を購入します。そうはならんやろ。
ゲーミング電柱の中から赤子が!
何言ってんの? と言われるような文章ですが、本当にこの通りになります。
現代のかぐや姫は竹ではなく電柱から出てきます。
正常な状態であれば、電話による緊急問い合わせ7が24時間受け付けられているはずですが、色々と限界だった彩葉は電話の途中で自己解決して通話を切断。
眼の前の状況を自力でなんとかしなければならないと判断します。8
ボロアパートの自室に連れ帰るも泣き止まない赤子に対して悪戦苦闘するも、隣からは無慈悲な壁ドン。しかも複数回来てるので、これはこれで身に危険があったのではないか。
要するに、彩葉にとっては色々と詰みの状況でした。よく発狂しなかったね……。
なんとその赤子、なんやかんやで2~3日で彩葉と同い年くらいまで成長します。そうはならんやろ。
彩葉、その子をかぐやと命名
2~3日で成長した後は成長が止まったようで、晴れて(?)同年代の女子二人による同棲生活が始まりました。
彩葉にべったり懐いたかぐやをなんとか部屋に押し留めて学校へ行くも、当のかぐやは勝手に電子決済でお買い物したりして生活資金に重大な影響を与えたり、台所をぐちゃぐちゃにしながら美味しい料理を作ってくれたり、果ては金融システムへのハッキングを提案してきたりします。特に最後、なんで?
なんかよくわからないが、かぐやはIT方面バリ強になっていました。月はもしかしたら科学力が進んでいるのかもしれません。9
金銭面での粗相は彩葉の生活というか、生命に直結するのでだいぶヒヤヒヤしていましたが、彩葉は辛抱強くかぐやに向き合います。超人が過ぎる。
作中における巨大な電脳仮想世界ツクヨミで、なんやかんやあってかぐやが配信者をやることになり、その収益で金銭面の問題をズバッと解決します。そうはならんやろ。
ところが彩葉は作曲できるし、かぐやはそれを歌えるしで、そうなったんですね。
ランキングトップになった配信者は月見ヤチヨとコラボライブできるよ、に対してかぐやが妙に乗り気だったのは、やっぱりなにか気づいてたんでしょうか。
トップアイドル帝様と配信で直接対決
ツクヨミにおいて絶大な人気を誇る男性配信者グループ ブラックオニキス。
彼ら抜きにツクヨミの配信文化を語ることはできない、というほどに人気で、作中でもしっかりその存在感を示してくれます。10
イケイケ俺様系男子の帝様率いる三人組。最初の絵面では一人女性が混じってるのかなと思わせておいて、その実全員男性です。
女性かなと思ったキャラからしっかり低音のダウナー系男子の声が聞こえてきて、さあ大変。しかも作品としてはそこまで重要というわけでもないのでサラッと流されます。オタクの狂わせ方を知ってるね!?11
人気急上昇中のかぐやに対して、帝様が求婚してきます。「配信でゲーム対決して、勝ったら俺と結婚してくれ」熱いですね。
百合を見に来た人間にこれをぶつけるのかと思われるかもしれませんが、帝は原作でも別にかぐや姫とくっついたりしないし、どうも配信者特有のパフォーマンスなのではと思われるような節もあり、明確に「そうはならないんだろうな」と思わせてくれる丁寧な描き方でした。
VR陣取りゲームっぽいゲームで対戦するシーンが始まり、バリバリのバトルアクションフェーズになります。これ何のアニメだっけ?
なお、勝負の中で帝の正体が明かされ、彼の目当てが実は彩葉12だったのではないかと思わせる描写まで出てきます。
彩葉が色々とぶっ飛びすぎていて、帝様が相対的にリアリティのあるキャラになっているのはなかなかおもしろポイントかも。
ブラックオニキスの三人でスピンオフ一本くらい作れそうなくらい、良いキャラたちでした。
この勝負の時点で、彩葉とかぐやの間にはかなり強い信頼関係が生まれています。自然な流れ13でここまでの関係の変化を描いてくれたところが良かったですね。
なお、色々と吹っ切れた彩葉はボロアパートの部屋から、マンションの高層階の部屋を購入14してかぐやとともに引っ越します。そうはならんやろ。
コラボライブ!
ワールドイズマインなど、ボーカロイドと言えば、な曲をやってくれます。
エンディングでもあの曲を流してくれて、しかも歌詞が作品といい具合にリンクしているので、あの頃聞いていた百合オタクにはかなり強めにオススメできます。
かぐや姫は月に帰る
月からのお迎えがやってきます。ゆゆゆのバーテックスみたいな連中がやってくるのでヒヤヒヤします15が、ヤチヨに諭されるとツクヨミにおけるゲームのルールを守ってくれます。結構律儀な連中です。
月の世界は、電脳世界と近い、という話も出てきますし、かぐやが月にいるシーンがかなり電子的な描画になっているので、本当にそういうものなのでしょう。16
帝様たちブラックオニキスも加勢して、かぐやを月に返さないために戦うも、敗北して最後は連れ去られてしまう。ここまでは原作通りです。
月の羽衣を着せられて目から光が消えるので、本当にこれで終わるんか?と不安に。そうはならんでくれよ。と願いながら見ていました。
当然、そうなるよな
ところで、昔話の時代から、物語にはお約束があります。
お約束そのものは時代によって変化してきました。令和の時代には、令和の時代のお約束があるわけです。
諸々のそうはならんやろをくぐり抜けて、最後にこの「当然、そうなるよな」17に落ち着いてくれるところも、超かぐや姫!の物語性を補強してくれているように感じました。
歌は月まで届く
遠く離れていても、大好きな人の歌は聞こえるものです。
月に帰って退屈なお勤めをこなすかぐやの下に、彩葉の歌が届きます。
好きなもののためなら全力になれる二人の間に、40万kmの物理的距離が問題になることなどあるでしょうか。
大好きな彩葉の歌が聞こえてきたので、かぐやはお勤めを爆速で終わらせ、地球に戻ることにしました。当然、そうなるよな。
なお、かぐやに届けるための歌を作る彩葉は、かなり人間としてだらしない生活をしていました。
カップ麺の空の容器、流石に片付けよう。いや、それよりも、お前本当に死ぬぞ!?18
歌は未来まで届く
なんやかんやで八千年の時間的距離が二人の間に立ちはだかることになりますが、かぐやは諦めませんでした。
諦めなかった結果が電脳空間ツクヨミであり、月見ヤチヨでした。
ついに果たした再会。この不屈の精神に対して、彩葉は明確にやりたいことを見つけ、そしてやり遂げます。当然、そうなるよな。
……このやり遂げる過程で、彩葉の自分を顧みない性質が色々と災いしてないと良いんですが、お兄ちゃんには「お前図々しくなったよな」と言われているし、流石にちょっとくらいは自分を大事にしてくれていることでしょう。
ハッピーエンドに連れていく
本作の魅力は、出会った二人の少女がお互いにこう思い続け、そして執念で成し遂げてしまうところにあります。19
かつて、人類は無力でした。
自然に対してなす術なく、力を尽くしても悲劇的な別れを避けることはできませんでした。
そんな時代の中で生まれた約束に則り、竹取物語は生まれました。
今や、人類は力を持っています。
富士山は活動を止めて久しく、災害に対しても20抗う術を得ました。
物語を悲劇で終わらせる時代ではなくなったこの令和に、超かぐや姫!が生まれたのです。
彩葉が執念で物理かぐやと再会する展開は、今の時代のお約束を強く反映しているように思えます。
言ってしまえば、視聴者がそうなってくれという期待にしっかりと応えるような、そういうカタルシスのお手本のような作品でした。
結論
物語は自由で良い。百合は自由で良い。
それを受け入れられる人のための、新しい竹取物語でした。
彩葉とかぐや、二人であればどんな困難も強引になぎ倒していけることでしょう。
まずは二人で、おいしいパンケーキが食べられる日を願うばかりです。
- 席の予約を取ってくれた妻に感謝。日付が変わるなり席がまたたく間に埋まっていく、競争率が異常に高い作品だった。
- 多少誇張してるかも。いや、してないかも?
- 驚くべきことに、数日で。
- ヘビに薬を飲まれたシュメールの大英雄が見たら何て言うか。
- VR空間でライバーの追っかけ。
- 酒寄彩葉の、目的のためなら自身を全く顧みない性質をよく表している。
- 中央線沿線の西のほうなので、おそらくは東京電力パワーグリッド株式会社。
- 電柱から赤子が出てきた、などと問い合わせてきた女子高生がいたら、やむを得ず出産してしまった不幸な子と断じられてしまったかもしれない。状況が余計にこじれていたであろうことを考えれば、彩葉の判断は妥当でないにせよ、理解できる。
- 作中のセリフから、月の都は電脳世界に近い性質を持つ、とのこと。
- 初登場時は「突然SHOW BY ROCK始まった?」と思うくらいにインパクトがあった。
- 駒沢乃依君。CV松岡禎丞。
- こう書くと語弊があるかもしれない。彼は彩葉のことをかなり本気で心配している。
- というにはふたりとも不自然なくらい超人だが。
- この辺りでのお兄ちゃんとの会話は、彩葉がというより酒寄家が超人の家系であることを示唆している。
- 演出も含めて、この辺りだけ妙にコズミックホラー。
- 月見ヤチヨの正体を知ると、むしろヤチヨが月の世界に合わせて電脳世界を作り上げたと言ったほうが正しいのかもしれない。
- これを、筆者は「物語として収まりのよい形」と捉えている。
- 酒寄彩葉とかいう女、目的のために自分を全く顧みない。
- 超人が執念で再会を成し遂げる、という点は、THE DARKSIDE OF DIMENSIONSの海馬瀬人を思い出させる。
- 無敵ではもちろんないが。