【ゲーム感想】SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-
目次
前置き
いつもの幻覚でもってバレットガールズの中にあるわずかな百合の香りを楽しんでいたら、なんと百合極振りの作品をお出しされたので、これはもうやるしかあるまいということでトロコンした。
いつも通り、本編シナリオのネタバレを含む記事になっている。
筆者はPS5版をプレイした。
グラフィックス
最高。
バレットガールズファンタジアの頃から3Dキャラモデルは相当に完成されていたが、それ以上に良い。攻略中はじっくり見る機会がさほどないものの、口憑けの術やステージ開始時の演出は飛ばさずに見たくなる。
会話シーンにおけるモーションの芝居がかった大げささも、慣れれば気にならない。
敵キャラグラも、パターンこそ少ないもののひとつひとつは丁寧な印象を受ける。
紬の武器に固有グラフィックがあるのが楽しい。特にDLC武器の電光退魔刀は、完全にライトセイバーで面白かった。
ここまで来たらジェダイの騎士っぽい衣装も欲しくなってしまうし、強化上限のせいで最終的に選択肢に入ってこないのが悔やまれるほど。
武器の重ね着システムがあったらこれを使っていたかもしれない。
ステージ背景は、和の雰囲気をしっかり出してくれている。
桜の木が美しいステージもあれば、雪が降り積もる寒そうなステージ、地獄にふさわしい溶岩ステージなど、ストーリー攻略中に飽きない程度のバリエーションがある。
一度だけ、雪のステージでめちゃくちゃ巨大な雪のテクスチャらしきものが降ってきて視界妨害に苦しんだことがあるが、再現条件は不明。バージョンも2023/02/04現在の最新ではなかったし、もう改善されているかもしれない。
溶岩ステージの特定の溶岩が、かなりギラギラしていて目に優しくない。が、ごく狭い範囲なので演出と割り切れば気になるというほどでもなかった。
ステージクリア時の自撮り演出が素晴らしい。
その時点で仲間に加わっている全員が、各々スマホに向かってしっかりポーズを決める。
このポーズにはそれなりのパターン数があり、どれも楽しそうで良い。
特に親指と人差指でV字を作ってドヤる紬、がおーのポーズでニッと八重歯を見せてくれる刃鋼さんがたまらない。狂う。
被ダメ時に服や肌に傷がつき、熱いステージだと汗をかいたりもする。これはクリア演出時にも反映される。
傷は特に痛々しいこともあるので、できるだけダメージを受けないように立ち回る動機にもなって、これはこれで良いのかもしれない。
雨が降ったりスライムに攻撃されると、しっかり濡れているような表現もされる。
口憑けの術演出は、絵面の耽美さ重視で、よくぞここまで振り切ってくれたなという感じ。
各キャラごとに3段階あり、絆が一定値まで上がると次の段階へ進む。
PVで見た人もいるかもしれないが、最終段階では全員、マウストゥマウス。とても助かる。
記憶の欠片を集めると設定資料の絵が見られる。
サウンド
和ロック感あふれる曲が多く、とても良い。
特に、14話で聞ける 閉じ込められた時(マップ_002)
や、他のステージで聞ける 汎用ボス戦
の曲のイントロの三味線が癖になる。マップ004
も、和を感じる旋律のイントロから、ギターと三味線へのつなぎ、バックのピアノが気持ちいい。
ラスボス戦後半で主題歌が流れ始めるのも、完全にオタクの好きな展開をわかってるヤツ。
ありがちな、ループの処理が甘くて1周したら途切れてしまい気分もぶつ切りに、なんてこともなく、しっかりループ処理してくれているのも良い。
エンディングの 言ノ葉ニ咲ク
は、ストーリー展開の余韻に浸れるしっとりとした良曲。
ヒット時効果音は全体的に軽めではありつつも小気味よく、武器が風を切る音から、木の床を踏む音まで、全体的に雰囲気を邪魔せずに気持ちよくプレイできるような心配りがされている。
バレットガールズファンタジアの難点のひとつであったシステムボイスうるさすぎ問題にも改善が見られ、装備画面でキャラクターを切り替えた際にもボイスがぶつ切りにならないし、重複して再生されないようになっている。
シナリオ/キャラクター
絵面の耽美さのみを重視しているわけではなく、シナリオ面でも「百合をやるぞ」という気概が伝わってくるものだった。
特に泡沫空間で顕著だったが、メインストリームからは少し外れた、他愛のない会話に結構な尺が割かれている。
これを邪魔と見るかどうかはプレイヤー次第だろうが、筆者としては、この言ってしまえばどうでも良いやり取りを踏まえてこそ、メインストーリーのエモさが際立つのだと感じた。
メインストーリーはテンポを損なわないためか、過程や感情の描写を意図的に削っているように見受けられる。
あとになってさらっと説明されたりするので、初見だと戸惑うこともあるかもしれない。
玉織 紬
普通のJK、と紹介されているが、実家が剣術道場で、それなりの腕前がある。
公式サイトの女の子にモテる設定は、本編中だとあまり直接語られない。
直接語られはしないのだが、確かにこれは好かれるタイプだという描写が積み重なって、かなり自然にメインメンバー全員から好意を向けられるようになっている。
難しいことは深く考えず、素直に真正面から物事にぶち当たっていく。飾り気がなく、明るく、お茶目さも完備。本人にその自覚はなくとも、人を惹き付けるカリスマがある。
少ない描写でここまで読み取れるので、今作のキャラクターの見せ方は本当にうまいと思う。
逆法の禁呪に手を出す決意をする過程はだいぶ端折られており、初見だとその辺りに引っかかりながら進めていくことになる。
後でフォローはされるものの、ここを納得できるかどうかはプレイヤーによって個人差がありそう。
靴下のレースや、チョーカーがオシャレポイント。
CV夜道雪。
依夜
信長に仕える忍び。
幼い頃に信長に拾われた戦災孤児であり、信長への恩義から来る忠誠心と紬への信頼の間で揺れる描写がある。
信長への忠誠心の描写をノイズと見るかどうかはプレイヤー次第だが、筆者としては必要な描写だと受け入れられた。
紬への感情がだいぶガチめ。特に泡沫空間のやり取りは頬がにやけてしまう。
泡沫空間の仕掛けで時限爆弾を使って自爆させちゃってごめんね……。依夜ちゃんの忍術もっと見せてほしい。
エンディング後、刀がちゃんと受け継がれてきていたのがあまりにもエモ。
CV伊藤美来。バンドリの弦巻こころ、安達としまむら(アニメ)の島村抱月、忍ネプのユウキ、アサルトリリィの一柳結梨の人。
刃鋼
右腕がゴッツいカラクリになっているお姉さん。
実は右腕だけでなく、全身あちこちのパーツがカラクリ化したサイボーグお姉さん。
普段は頼れるお姉さんだが、休日は酒(油)飲んで寝ているだけという、社会に疲れ切った残念美人化するところもギャップがあって良い。
元いた世界の思想や、そこで染み付いた諦観。そんなある種ドライに生きていた彼女が、紬の眩しいまでのひたむきさに運命を感じる感情の動きが大変良い。
ある意味で、三人の中で最も感情が重い。
狐美魅との会話では、同じ女に惚れた女同士の百合を見せられて、筆者のテンションが爆上がりしていた。
バレットガールズのゆるふわ解像度からは想像できないくらい、ガッツリ百合をやってくれてる。
極伝ランクを取るたびに年代物の潤滑油で祝杯をあげたがるが、油は経年劣化するのでは……?
ステージクリア時の自撮りで見せてくれる八重歯に狂いそう。
CV上坂すみれ。艦これの吹雪型、ニ航戦、バンドリの白鷺千聖、アズレンのサラトガちゃん、明石、ガルパンのノンナ、シャリーのアトリエのシャルロッテ、サンブレイクのルーチカの人。
大春日狐美魅崎之甲矢比売(狐美魅)
おおかすがのこみみさきのはやひめ
と読む。狐耳にもふもふの尻尾持ちの小柄な子。会話シーンでピクピク動く耳が可愛い。
陰陽術の天才だが、ある事情から家族と離れて忍びとして生きることになった。
孤高の天才として生きていたが、紬とのふれあいで心を開き、家族の愛情を理解する。
口ではあれこれ厳しいことを言うものの、基本的に善意の塊。優しい。
序盤こそツンツンしているが、終盤はかなりデレる。典型的ツンデレと言える。
四人のうち、お互い冷静枠である刃鋼との会話も良い。
CV富田美憂。となりの吸血鬼さんのソフィー、スタリラのララフィン、アサルトリリィの定盛、ブルアカのシミコ、りりくる はぁとの都和の人。
織田信長
天下統一を前に本能寺で焼き討ちを食らう人。
かなりごっついおじさま。
魔王、魔王とストーリー中で繰り返されるのでそういうことなんだろうなと思ったら予想通り。
第六天魔王に至るまでの感情の動きがとても自然に描かれている。ある意味では、これも歴史の修復力なのかもしれない。
CV黒田崇矢。新世界樹のガンリュウさん、FGOのフェルグス、イヴァン雷帝、DQ11Sのウルノーガの人。
上杉謙信
御仏パワーの代行者。物言いから生臭なんではないかと勘ぐってしまう。
信玄ちゃんよりも追撃に殺意があり、戦いにくかった。
CV上間江望。バレガの神代海凪の人。
武田信玄
何故かロリ化した信玄ちゃん。
設置竜巻とかいうクシャルダオラみたいな真似は許しがたいが、それ以外では直線的で戦いやすい相手だった。
CV斉藤朱夏。
魔王
声だけ登場。終盤まで進むとあの声の正体はお前か、となるが、それ以上のことはない。舞台装置。
システム
スピード感あり、ギミックあり
無双というには敵が少なめだが、操作のスピード感や手触りの良さはバッチリ。
大味に大群をなぎ倒していくというよりは、丁寧にボスやギミックに対処していくゲーム。
ステージ進行はクライスタに近いものがあるが、あちらよりもゲームスピードが早く、ヌルヌル動く。
マリオやカービィのようなステージギミックがあり、ちょっとだけ頭を使う要素もある。
特に泡沫空間ではギミック重視になっており、初見時はなかなか新鮮だった。
親愛度をあげてスキルを習得
三人の仲間と紬の親愛度が上がるにつれて、使用可能なアクションが増えていく。
親愛度は100まで上がるものの、難易度「普」を1周した時点でほとんど上がり切るくらい。「難」をクリアするまでには全員上限に達しているだろう。
とにかく、やれることが増えるとそれだけ楽になっていくので、親愛度は最優先で上限まで上げてしまいたい。
メイン火力は忍技
三人の仲間はそれぞれ独立した忍技ゲージを持ち、ゲージを消費して強力な忍技を使うことができる。
最終的にはこれがメインの火力となるため、紬はひたすらゲージ貯めに専念することになりがち。
武器強化
ステージ初回クリア報酬で武器が手に入ることがあり、これを強化していくことで様々な武器スキルを発動させられる。
忍技ゲージと上昇する体力値が重要であるため、最終的に紬の武器は姫鶴一文字ほぼ固定になるだろう。
弾き貫胴
はじきぬきどう。
狐美魅の絆を上げていくと、敵の攻撃を弾く 後の先
及び、そこから派生して反撃する 弾き貫胴
が使用可能となる。
紬がメインで取るアクションはこのカウンター行動になっていく。
小さい雑魚はタイミングが難しいものの、ボス格はカウンターしやすい攻撃を持っている。
弾き貫胴が決まると忍技ゲージが一気に貯まるため、これを多用して忍技をガンガンぶっ放していく戦術が非常に強力。
カウンター可能な行動は以下の通り。
ボス格 | 行動 |
---|---|
骸骨武者 | 振り下ろし、突き |
カラクリ将軍 | ドリル突き |
獄卒 | 連続パンチ |
弾き貫胴はエフェクトもかっこいいので、使っていて気持ちよかった。
口憑けの術
PVでも流れていた耽美な絵面のヤツ。専用ゲージを消費して継続する強化状態で、仲間のうちの誰としたかによって属性が変わる。
依夜なら火属性。鋼体がつくのでゴリ押しが効きやすくなる。
刃鋼なら雷属性。回避行動が高速ステップになり、コンボに組み込みやすくなる。
狐美魅なら氷属性。徐々に体力が回復する。
また、口憑けの術をした仲間の忍技ゲージはその時点で最大になり、その後も持続中は結構なスピードで忍技ゲージが自動回復する。
とにかく強力なので、ボス戦ではこれをきっちり打てるかどうかで難易度が劇的に変わる。
ただし、特定条件下で口憑けの術が発動できなくなる不具合もあった。ラスボス「魔」の極伝を目指すときにこれに陥り、辛かった。
落ち着いて戦場から離脱し、再度出撃すれば直るはず。
依夜の忍具
爆弾を置いたり、デコイを置いたり、回復壺を置いたりできる。
回復壺は高難易度では生命線になることもあり、できる限り各地の宝箱を探して3つ置ける状態にしておくのが望ましい。
筆者は2回の状態で極伝マラソンを終え、その後に3回目の宝箱を開けて微妙な気持ちになった。
ボス戦は丁寧に
特に謙信、信玄ちゃんや、信長戦では丁寧な立ち回りが求められる。
雑にゴリ押ししようとするとあっさり死ねるバランス。
やりこみ
トロフィーコンプリート
調律の巫女のみラスボス戦がキツいが、それ以外はそこまで難しくない。
調律の巫女
全難易度、すべての戦場を「極伝」でクリア。
ラスボス戦の難易度「魔」が一番厳しい。
おそらく5分以内に勝利する必要があり、ラスボスの残りHP半分を切って出てくる獄卒をさっと倒してから、最後に出てくる獄卒を無視して忍技で一気に削り取るのが楽。
リトライ性がバッチリなのが救いか。
全武器最終強化
姫鶴一文字と、味方の鋼体持ち武器を最大強化したら、後は片っ端から鍛えていくだけ。
調律の巫女を達成しようとする過程で必要なリソースは自然と集まるので、このトロフィーのためだけに周回を重ねる必要はない。
冥界での記憶
記憶の欠片をすべて集める。
かなり見落としがちだが、物によってはわかりにくい場所にあるので、極伝マラソンとは別でやっても良いかも。
スクショ付きで場所を公開してくれている攻略サイトもあるので、時間さえかければ特に難しくはない。
宝箱を開けてから戦闘の中断を行っても、入手状況は引き継がれる。剣豪達成後はこの方法でサクッとステージから出てしまうと楽。
特に泡沫空間は序盤のうちに見落としやすいものが固まっているので、取って即中断ができるとかなり早い。
剣豪
敵を15000体撃破する。
筆者は調律の巫女が終わってから、冥界での記憶を達成するまでの宝箱探し中に達成した。
もし足りないようであれば、14話が稼ぎやすいかも?
総評
昨年発表されてから、バレットガールズくらいの解像度だろうと期待度を抑えていたが、蓋を開けてみれば予想を越えてガッツリ百合をやってくれた。
ボリュームも小さすぎず、しかしコンパクトにまとまっていてちょうど良い。
アクション面のちょっとした難しさがあり、そこを苦手とする人にはやや勧めにくいが、筆者としてはラスボス「魔」の極伝以外は楽しめる範疇だったのではないかと思う。
シナリオ、サウンド、グラフィックすべてが良く、システム面の手触りもバレットガールズファンタジアから劇的に進化しているので、細かな不満はあれど、概ね良作と言って差し支えない作品。
ロックオンの挙動改善など、細やかなアップデートがされてきているのも好印象。
刃鋼さんの八重歯が一番良かったかもしれない。