BLUE REFLECTION/帝 シナリオを考える
目次
本記事は、BLUE REFLECTION/帝のシナリオについて、BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣、BLUE REFLECTION/澪の内容も交えて好き勝手に考えたことを書き連ねるものである。
ときには、考察と呼ぶことすらはばかられる論理の飛躍も厭わない妄想の塊であり、本記事の内容が正解などと主張するつもりは全くない。
「れいっ」以外の作品を全て履修したとは言え、記憶から大事なことがすっぽ抜けていたり、教養のなさ故に思い至らぬ事象が少なからずあるかもしれないが、ご容赦いただきたい。
言うまでもないことだが、BLUE REFLECTIONシリーズ3作についてのネタバレを含む。
特に帝は2周目エンディングまで見ていることを前提としていることにご注意いただきたい。
3作品の関連
本記事で中心とするのは、タイトルにもある通り、帝である。
帝からはゲームとしての前作である幻に舞う少女の剣1、発売直前に放送されていたアニメである澪それぞれのシナリオやそこで起きた事象に言及されることがある。
つまり、幻も澪も帝のシナリオに深く関連している作品であり、それらを切り離して考えることはできない。
本記事では、3作品は互いに地続きであり、幻をベースとしてその後に澪、帝と続いてきたものであるとする。
本記事において、パラレルワールド説は採用しない。帝はあくまで、前2作品からつながる未来の話だと考える。
時系列の整理
世界の再構築や雫世界のループを絡めると、時間という概念があやふやに感じられるかもしれないが、本シリーズのシナリオは作中世界の因果関係をもとにして語られているため、本記事でもそれに則る。
ドラクエ11のような、神話的な捉え方をしても面白いとは思うが、それも本記事のスコープ外とさせていただきたい。1. 100万年前
前提として、本作の世界において、原種は100万年周期で互いに相争い、地上の支配者を決定していた。2
100万年前の戦いにおいて、原種ダアトが人間の想いの力を味方につけて勝利した。
ここで人間の集合的無意識の世界コモンが形作られ、以後、想いの力を強化して次の戦いに備えるため、ダアトは地上を人間にとって住みよい世界に作り変えていく。
2. 幻
白井日菜子が原種と戦い、最終的にダアトを跳ね返した。
跳ね返した後、世界は原種戦争の期間のことをなかったこととして処理し、再構築される。
こうしてなかったこととして処理された期間に、美弦と百が原種ネツァクに敗北し、陽桜莉も含め、月ノ宮勢は一度死んでいることが澪で語られている。3
3. 澪
日菜子がダアトを跳ね返し、世界が再構築された後の話。
水崎紫乃がコモンへの侵略計画を推し進め、陽桜莉たち青い指輪を持つリフレクターたちと敵対する。4
紫乃たちは少女たちのフラグメントを奪い、それによってコモンへの扉を開いた。5
紫乃がコモンに到達した時点で灰が降り始め、世界中の人間の想いが希薄になる。
紫乃は陽桜莉たちによって救われるも、灰は降り続けている。
他の面々が改心したり救われたりしている中、駒川詩だけは赤い宝石のついた指輪を眺めてニヤニヤしており、ブレていない。
3.5. 澪と帝の狭間
詩による世界再構築計画が実行され、失敗する。
美弦がいなくなり、陽桜莉が美弦を探し出す。
平原姉妹が母と和解する。
世界システムがバグを検知し、初期化プロセスを開始。灰を降らせる。
4. 帝
ユズとライム、ふたりに呼応したリフレクターたちの想いによって雫世界が形成される。
愛央が未来から引っ張られて雫世界にたどり着き、世界を再構築して、リフレクターたちを未来へ送り出す。
疑問
倒すと跳ね返す
帝において、幾度かダアトを「倒した」と表現されたことに違和感があったが、最終的に「リフレクトした」と言い換えられている。
これは、「倒した」と表現した時点で、日菜子が当時のことを明確に思い出していなかったものと推測される。6
幻のラストバトル直前の会話において、ダアトは「自分を倒せば、この戦いの勝利者はいなくなり、他の原種が出てくるだろう」という旨の発言をしている。
跳ね返されたダアトは光の粒子となって消えたが、ダアトそのものであったはずのコモン7はそのまま残されている。
コモンとダアトを同一視すべき不可分な存在であると仮定すれば、幻の後に登場するコモンは、地上の支配者や世界の管理者としての権能を失った状態のダアトである。
しかし、世界の管理者は不在の状態に陥っているし、詩とコンタクトを取った他の原種の存在から、やはりダアトが倒されたときに起こるであろうとされていた事象が起きてしまっている。
日菜子がダアトを倒そうが跳ね返そうが、別の原種はやってくるし管理者は不在になって灰が降る。
では、日菜子がダアトを「倒すのではなく、跳ね返す」とした意味とは何だったのだろうか。
日菜子の活躍を半ば徒労たらしめた原因は、ダアト君の見積もり不十分ではないかと筆者は考えている。
コモンが残ったこと、原種戦争がひとまずの終結を迎え、日菜子が心から願ったことをひとつだけ叶えた8こと、ダアトの最後のセリフ9から、別の原種は来ないし管理者不在によるバグも起きない期間10が確実に存在したのだろう。
ダアト君、日菜子に跳ね返されてほぼ消滅するも、管理者としての権限を維持するだけの最小構成となってとどまり、まあしばらくはこのまま世界を維持して次の原種戦争で勝てばいいか、とか考えていたに違いない。
100万年単位で動く天文学的規模のノロマ軍団筆頭であったところのダアトは、100万年くらい余裕やろ、と思っていたが意外とあっさり寿命11を迎えてしまったのである。
後述の詩とコンタクトを取った原種とも合わせ、本記事では「原種連中は意外と間抜け」説を推したい。
きらら登場時、想いの力を著しく消耗していたのはなぜか
神の声を聞くことができる能力に関係していると思われるが、本作中では明かされていない。
詩帆ときららは燦に登場することが明言されているため、そちらで補完されると思われる。
平原美弦と田辺百がリフレクターになったのはなぜか
幻において、コモンは他の原種の襲来に対抗するため、ひとりの人間をリフレクターとして選び出して戦わせると語られている。
日菜子が戦った原種戦争時点においてはそういった決まりがあったはずなのだが、なぜか月ノ宮ではリフレクターがふたり選ばれている。
澪のシナリオをやるために幻のパラレルワールドを作った説もあるが、原種戦争の回想において、百は剣こそ出していたものの変身していなかったのが気になる。
ここは推測で語る他なく、特異点ごとに基本的にひとりまでのリフレクターを選び出して戦わせるが、何らかの不具合によって百にその力が分散された、とかだろうか。
世界システム君、もしかしてバグだらけ……?12
(2021/12/09追記)
美弦がリフレクターになった経緯は、日菜子が勝利したことによる再構築前後で異なる旨がしっかり澪で描かれている。
再構築前はユズ・ライムと契約し、想いの暴走を鎮める過程で百と接触、百の想いの暴走を鎮め、フラグメントを固定化して得た指輪を百に渡している。
ここで、百が指輪を渡されてサポーターになっており、再構築前の百はリフレクターではない。13
再構築後ではコモンの管理権14がダアトからユズ・ライムに引き継がれた。
AASAがリフレクターを集めており、適性ありと判断された美弦に、斎木有理が指輪を渡すシーンが描かれている。
美弦たちが原種戦争期間の記憶を引き継いでいるのはなぜか
美弦たちが原種戦争期間の記憶を引き継いでいるのは、想いの力がオリジンに作用したためだろうか。
日菜子が引き継いだのと、原理的には同じであるように思う。
彼女がネツァクに敗れたのはメンタル面の脆さ故であり、本来は原種を倒すほどの強い想いを抱えていたはずである。15
(2021/12/09追記)
美弦に対し、紫乃が接触して再構築前の記憶を見せている。
AASAって結局何?
地味に帝のゲーム中TIPSに用語として登録されている。
Ancient Ark Solving Agency(超古代遺物研究機関)の略。
世界の危機を観測し、危機に対抗する力としてリフレクターに活路を見出し、リフレクターを集めていた。
TIPSでは危機と灰が併記されていることから、この危機はすなわち灰のことではないようである。
澪の時点で斎木有理、靭こころ、田辺百がAASAとして活動していたので、灰以前から何かしらの危機があった。
この危機とは、水崎紫乃事変のことであったと見るのが自然だろう。
(2021/12/09追記)
公式サイトの用語集にAASAの説明も書かれている。
AASAは略称で正式な名称はAncient Ark Solving Agency(超古代遺物研究機関)。
司城夕月(ユズ)と司城来夢(ライム)の父親である司城教授がリーダーを務めていた研究機関。原種の調査を行っている。リセットされた世界では指輪を研究しており、モモに指輪を渡しフラグメントの異変を調べるように依頼した。
なんと、ユズとライムの父がここで登場する。
水崎紫乃事変の前兆としてフラグメントの異変を検知し、AASAも水面下で動いていたのだろう。
指輪の研究をしており、帝においてはリフレクターを集めていたことが語られている。
澪では、日菜子の勝利による再構築後の世界において、適性を認められた美弦に対し、斎木有理が指輪を渡すシーンが描かれている。
駒川詩と原種
帝より前に、詩は原種とコンタクトを取っており、それによって「神の力が使える」と陽桜莉たちに話すシーンがあった。
いつ頃から原種とのつながりがあったかは不明だが、筆者としては水崎紫乃に加担する時点ではすでに原種とつながっていた説を推したい。
つまり、日菜子がダアトを跳ね返して世界が再構築された後、水崎紫乃に加担するより前に彼女は原種に見初められ、赤い指輪によってリフレクターになっていたのである。
この原種は狡猾であったのか、あるいは直接顕現して好き勝手できない事情があったのか、表での活動は詩に任せて、自分は出てきていない。16
紫乃の計画に加担し、人間の想いを管理できれば、想いの力は原種戦争において脅威ではなくなる。
だが、詩は水崎紫乃事変の一番重要なところで、後頭部をフライパンで殴打され気絶していた。
水崎紫乃の灰と初期化の灰
澪で紫乃がコモンに到達したとき、世界に灰が降り始めた。
この灰は人の想いを希薄にし、悪いケースでは昏倒させる。
ただし、発熱などの症状は澪では描かれておらず、最終話において水崎紫乃事変が終わった後、一度止んでいる。17
その後、陽桜莉と瑠夏の会話シーンからまた降り始めている。
こちらが初期化の灰であり、水崎紫乃の灰とは異なる性質のものであると筆者は推測している。
紫乃の灰は人の想いを希薄にし、昏倒させるものだったが、初期化の灰は降り積もった後に一気にその力を解放し、灰病をもたらすものだ。
陽桜莉と瑠夏の会話シーン時点では、まだ初期化の灰はその効力を発揮していなかったのである。
澪における灰の違い(2021/12/09追記)
紫乃事変の際に降っていた灰と、初期化の灰とは異なる性質を持っていると結論づけたが、澪における灰の描写を振り返ってみよう。
実は、灰は澪の作中を通して度々降っている。
最初に確認できるのは1話冒頭、上空から見たカット。
直後に映される女子生徒の服が夏服であるため、雪が降っているという線は薄いだろう。
その後、5話の由紀姫と都が電話するシーンで、由紀姫側のみ灰が降っている描写がある。
身体の弱い由紀姫と灰病を関連付ける要素とも考えられるが、この時点では灰はまだ広く灰病をもたらす存在ではない。
なぜなら、帝において陽桜莉がこう発言している。
「世界中で灰が降り始めたのは確かだよ」
「灰が降り始めてから、私たちは再びリフレクターになったこと……とか、どう?」
「そもそも、私たちはちょっとした事件をきっかけにリフレクターになったんだけど……」
「その事件が解決したときに、一度リフレクターの力が使えなくなっちゃったんだ」
「けど、ある時からまた力が使えるようになったの」Chapter7 陽桜莉のセリフより
つまり、澪5話時点では、世界の危機と呼べるほどに灰病が深刻な被害を出している段階ではない。
8話において、灰が降り始めるのと同時に、大勢の想いが不安定になる描写がある。
直後、仁菜が「これが紫乃の力か!」と発言しており、紫乃はある程度の範囲内にいる人間に対して想いの不安定化を行えるようである。18
次に確認できるのは14話。灰の降る街の中を、瑠夏がパトロールしている。
人々は特に傘を指したり急いだりする様子もなく、灰に対して何ら脅威を感じていないようである。
瑠夏も特に気にせず、周囲の人を観察しているが、ここで彼女は大勢の想いが脆くなっていることを感じ取っている。
リフレクターの力により、想いが著しく不安定になった女性を検知して、瑠夏はその場に急行するが、たどり着いたときにはもう灰は止んでいる。
その次が20話。ユズとライムが倒され、紫乃がコモンに到達したタイミングである。
人々の想いは希薄になり、昏倒する者も少なくなかった。
だが、この灰も21話には止んでいる。
最後に24話、最終話の最後に、陽桜莉と瑠夏が部屋から外を眺めるシーンで降っている。
最も大事なことは、澪公式サイトの用語集に書かれている。
まるで雪のように降り注ぐ灰。世界が不安定になっていることで発生しているようだが…?
灰が降る条件として、澪作中では想いの安定度の変化19が鍵になっているように見える。
水崎紫乃の灰と説明したが、実は水崎紫乃自身が灰を降らせているというより、水崎紫乃の行動によってこの条件が満たされ、それによって灰が降っているというほうが正しそうである。
1話で灰が降っているが、百はこの時点からすでにAASAに依頼されてフラグメントの異変を調べている。
5話は由紀姫の精神の安定化か、直前の詩の精神の不安定化がキーだろうか。
由紀姫については、都によるカウンセリングを受けて、フラグメントを固定化させたのと近い変化が起きたように見える。
8話は紫乃が大勢の精神を不安定化させ、14話では原因こそわからないものの、瑠夏が大勢の精神が脆くなっている様を観測している。
20話はコモンの番人が倒されたことによる不安定化だろう。
24話のラストのみ、やはり以前の灰とは性質が異なるように見える。
陽桜莉と瑠夏が灰の降る外を眺める直前のシーンで、詩が赤い指輪をした手を掲げてうっとりしている。
これが後述の再構築計画へとつながるものであると、筆者は考えている。
初期化の灰と駒川詩の再構築計画
駒川詩は原種から得た情報により、オリジンに自らのフラグメントを捧げて世界を望み通りに再構築しようとしている。
それは失敗に終わったとしか語られておらず、詳細は不明だが、回想中の詩のセリフにヒントが隠されている。
「私は痛みが欲しいの! 人のいない世界なんて意味がないじゃない!」
「私はそんなの望んでない! 返せ! この世界は私のものだ――!」詩のセリフより
ここからは想像を多分に含むが、想いが存在しない世界をすなわち人が存在しない世界と曲解したオリジンが結果的に初期化の灰を降らせたのかもしれない。
ここは時系列をしっかり考えなければいけない。
まず、美弦はアニメ終了時点で一度、陽桜莉の前から姿を消している。
陽桜莉が美弦を探し出し、その後で詩がふたりに母親の居場所を教えている。
ただし、母親の居場所を教える回想の中において、陽桜莉たちは変身している。
リフレクターの力が再度使えるようになったのは初期化の灰が降り始めてからであるため、この時点で初期化プロセスは開始している。
おそらく、陽桜莉たちに母親の居場所を教えた時点では、詩は灰の正体を正しく認識していなかったのだろう。
灰の降り始め、リフレクターの力が再使用可能になるタイミング、灰の力が猛威を振るうタイミングそれぞれにズレがあったと考えるのが自然だ。
詩はオリジンにフラグメントを捧げ、その結果、管理者不在を検知した世界システムによって初期化プロセスが開始される。20
詩はその灰の正体を自らの望んだ世界を作るためのもの、自らが神の力を行使した証左であると認識して大喜びしていたに違いない。
その機嫌の良さで平原姉妹に母親の居場所を教えてあげたし、神の力が使える自慢もしちゃったのだ。
さて、上機嫌で平原姉妹が曇っていく様を眺めていた詩だった21が、ここで降り積もった灰の効果が発揮され始める。
人がどんどん灰病で倒れ、死んでいく様を見て、本当に再構築で想いのない理想の世界が実現できるのかと原種を問い詰めたところ、「人いなくなるし、想いもなくなるよな?」的な答えが返ってきてキレた、という顛末だろう。
原種からして見れば、次の原種戦争で想いの力が使われなければそれで良いだけなので、初期化を経て人のいない世界に再構築されたとて全く問題はないのである。
かくして、詩の理想の世界実現計画は頓挫し、原種は想いの力を結果的に滅ぼせると安堵していた。このときまでは。
帝における陽桜莉たちの年齢(2021/12/09追記)
帝において、愛央は陽桜莉のことを年上だと言う。
愛央は高校1年と見られ、澪作中において陽桜莉は高校1年、美弦は高校3年である。
陽桜莉を年上と認識するからには、陽桜莉は2年になっていそうなものである。22
さて、美弦が制服のままなのはなぜだろうか。
度重なる行方不明で出席日数が足りず、留年してしまったのだろうか。23
あるいは、水崎紫乃事変で混乱したため、聖イネス学園の学生が一律で留年という措置になった可能性も考えられなくはない。
(2022/01/16追記)そもそも、澪において美弦は聖イネス学園の名簿に存在しないと語られている。
入学式っぽい式典に参加している詩はともかく、山田と美弦は元々ただのコスプレだった説が……。24
雫世界に来る前の季節(2021/12/09追記)
雫世界に来る前、こころたちがいた世界の季節は謎である。
それというのも、彼女たちの服装が夏服冬服どっちかに統一されていないため。
こころ、勇希、日菜子、陽桜莉、美弦、詩は夏服、伶那、詩帆、きらら(、愛央)は冬服である。
衣替えするか否かの狭間の季節であったか、あるいは夏真っ盛りだが、伶那、詩帆、きららは冷房に弱く着込んでいたか。25
愛央については、元の世界が夏であることが明確に描かれている。
にもかかわらず冬服で行動しているのはどういうことだろう。彼女も冷房に弱い体質なんだろうか。
歯車としての星崎愛央
話は変わるが、星崎愛央の正体について、作中の立ち位置から考察していこう。
技名と北欧神話、セフィロトツリーと他のキャラクターたちとの関係から考察するのは、すでに先人がいるため、ここでは紹介するにとどめておく。
出来たー(勇希の声)
ブルーリフレクション帝の考察を書きました。fusetter使うの初めてなので不安。
1万文字以上の駄文になっているのでお時間あるときにどうぞ。愛央の正体の部分が長い。
#ブルリフT
#ブルリフT感想 https://t.co/LtqfVtICFv—ブルリフT考察の種 (@buluref_kousatu) December 4, 2021
星崎愛央は再構築後の未来から雫世界に召喚され、リフレクターたちを未来に送り出す役目を持っていた。
その後、愛央自身はループに囚われ、オリジンの最奥でみんなの想いをせき止め、ひとつにまとめるための装置に成り果てる。
次の愛央を、フリスペの入ったスマホを落とすことで雫世界に召喚し、延々と繰り返していく。
星崎愛央は、みんなを未来に送り出すための歯車として世界システムに取り込まれ、同じ運命を回り続けるのである。
同じ場所をぐるぐると周り、自分は何も得ることがない舞台装置、永遠の歯車と化したのだ。
愛央自身は、オリジンルート最奥の「それ」に触れたタイミングで、自らの運命を受け入れている。
「また学校でみんなと会うために」は、次のループでみんなと会うことを指しているし、「いってらっしゃい」は、彼女がループを受け入れていることを端的に表している。
「それに触れたとき、私はわたしでない何かになった」のひとつの答えが、この歯車化だ。
しかし、そのことに愛央は全く絶望していない。
「たくさんの想いに触れて、私は」
「私はたぶん、退屈な毎日を過ごしてた頃とは違う自分になれたんだ」Final Chapter 愛央のセリフより
自分の運命を受け入れ、みんなの未来を守るために戦って、そして笑って送り出す。
死神の格好した天使か????
水崎紫乃と原種(2021/12/09追記)
先程の項目で貼ったセフィロトツリーを絡めた考察の中に、ネツァクが緑とエメラルドの象徴である旨が記されている。
これは水崎紫乃が放った力の色と一致する。
紫乃自身、肉体が変質して人間でない存在を内に宿しているように見え、そしてブルリフ世界において人外の意思を持つ存在と言えば、原種である。
日菜子の想いの力に敗れたネツァクは、次の原種戦争に備えて想いの力を強く憎む水崎紫乃に目をつけた。
紫乃を唆し、地上の支配者になるための最も大きな障害物である想いの力を、自らの管理下に置こうとしたのだ。
彼女は赤い指輪を渡してリフレクターを選び、手駒として集めた。
コモンの知識を持っていたことなども含め、彼女は原種に取り憑かれていたと見て間違いないだろう。
ユズとライムに対して激しい憎悪を向けたのも、ネツァクが中にいたからとすれば自然である。
赤い八面体
帝のラスボスは、唐突に現れた赤く輝く八面体であった。
これが二十四面体であればトラペゾヘドロンモチーフではないかと思っていたが、本作のラスボスは八面体である。
オリジンルート最奥にて、影の愛央が姿を変えて八面体になるシーンがあったが、あれはいったい何者であろうか。
筆者は詩の指輪に関連する何かではないかと睨んでいるが、澪で確認したところ、彼女たちの指輪についた宝石は四面体のようであった。
形状こそ違えど、赤い宝石のような何かであるという共通点はあり、詩と接点のあった原種も深く関わっているのではないかと想像している。
ラスボスは第4形態まで存在し、最初は八面体であった姿を巨大な怪物へと変化させ、以後は変化するごとに身体から赤い結晶がむき出しになっていく。
シリーズを通しての最重要カラーである青との対比で赤くしているという意味もあるだろう。
あるいは、黄昏の太陽を表す赤とも取れる。26
沈む太陽は終わりの象徴27であり、愛央たちの鮮やかな夏休みの終わりを告げる者でもある。
では、データベースに登録されたラスボスの各形態の名前を見てみよう。
第1形態は システム
であり、第4形態は せかい
である。
すなわち、ラスボスは世界システムそのものか、あるいはそれを象徴する存在だと推測できる。
ただし、第2形態、第3形態は世界システムとするにはやや異質なネーミングだ。
第2形態は 終わりを望むもの
。
世界システムは神であり、システムであり、人間的な考えをしない。
つまり、何かを望むことはないのである。
しかも、世界システムの行動は世界を初期化することによるバグの解消であり、世界システム側から見て終わりとは言えない。
直近で終わりを望む旨の発言をしていたのは、オリジンルート最奥で愛央が直面した、影の愛央である。
影の愛央は、星崎愛央を終わりのないループから解放することを望んでいたのだろうか。
もしかしたらそういう側面もあったかもしれないが、影の愛央が今の愛央に対して突きつけた「諦めろ」は逆の意味ではないかと、筆者は思っている。
こう言えば愛央は奮い立つ。仲間を未来へ送り出すための装置としての役目を、なんとしてでも果たす。
オリジンルート最奥で「それ」に触れた瞬間、特別な存在になること、愛央が愛央である限り、必ずそれに触れることをこれまでのループで知っていた影の愛央たちが、「諦めろ」を受け取った愛央がどう動くか、知らないはずがないのである。
影の愛央が立ちはだかるのは、そう定められているからでもあるが、みんなの想いをひとつにまとめるための障害という側面もあった。
共通の敵、というとネガティブなイメージだが、共通して乗り越えるべき困難として立ちはだかり、愛央たち全員の想いが最大の効果を発揮するよう手助けをしているように思えてならないのだ。
では、終わりを望んでいたのは誰だろう。
筆者は次の第3形態 想いを断つもの
から、詩と組んで世界を再構築しようとしていた原種の成れの果てだと推測する。
世界システムは、システムであるが故に人間的な考えをせず、ただ粛々と動き続けるのみだ。
初期化しようと様々な手段を試みているに過ぎないのであれば、「怒っている」とは表現されなかっただろう。想いを断つもの
は、想いの力に脅威を感じている。
かつては、水崎紫乃がそうであった。そして、原種戦争でダアトや日菜子に敗れた原種たちもそうであったはずだ。
だから、詩と組んだ原種は、詩を利用して想いのない世界をオリジンに作らせようとした。
そして失敗し、間抜けにも影の愛央同様に、オリジンを構成する歯車として取り込まれてしまったのではあるまいか。28
すなわち、筆者はラスボスの正体を、影の愛央たちと、詩を利用しようとした原種、オリジンの歯車に巻き込まれたまま回り続けるこの2種類の存在を取り込んだ世界システムのコアではないかと考えている。
(2021/12/09追記)
指輪の色自体は、水崎紫乃側についたリフレクター勢は基本的に赤い。
ただし、リフレクター衣装の胸元にあしらわれる宝石の色は個々人で異なる。
陽桜莉、瑠夏、再構築前の美弦は青、山田仁菜は黄色、駒川詩は赤である。
更に、詩は首飾りにも赤い八面体らしき形状の宝石を用いている。29 30
(2021/12/14追記)
赤い指輪については、澪公式ツイッターが質問箱で回答している。
AASAが作った青い指輪同等の技術で作られているようだが、その起源までは語られていない。
星崎愛央が帰ってきた理由
2周目、再会を願う想いがある状態でエンディングを迎えると、再構築後の世界で、最後に一緒に過ごした仲間と愛央が再会する様子が描かれる。
これは、オリジンに想いを届けて、その力によって心から願うことをひとつ叶えた結果だと筆者は推測する。
幻において説明された原種戦争システムの仕組みはこうだ。
- 原種戦争期間がなかったことにされ世界が再構築される
- 原種を倒したリフレクターの心から願うことがひとつだけ叶う
原種を退けるほどの強い想いを持ったリフレクターが心から願うことでオリジンにその想いが届き、それを叶えながらオリジンが世界を再構築しているのであろう。
本作の雫世界での時間が原種戦争期間であるとすれば、原種を取り込んだ世界システムコアを退けるほどの強い想いを受け取ったオリジンが、心から愛央との再会を願った彼女たちの望みを叶えたとして、不思議はない。
- 以下、無印または幻と表記。
- 以後、原種戦争と呼ぶ。
- 幻において、22の特異点のうち15番目が破壊されたという発言があったが、それが月ノ宮であったのかもしれない。(2021/12/14追記)ただし、星ノ宮が17番目、タロットカードの大アルカナの対応として星が17、月が18なので、月ノ宮は18番目とする見方もできる。
- 以後、水崎紫乃事変と呼ぶ。
- ちょうど、愛央たちがオリジンルートを開いたように。
- 最初に管理者を倒したと表現したのは、記憶の戻っていない状態のユズ。後になって、日菜子が「リフレクトした」と明言してくれている。
- 幻において、ユズとライムは「今の時代における勝者の原種」すなわちダアトを「コモンそのもの」と表現している。
- ユズとライムの記憶(+原種戦争期間中の記憶)を引き継いだ。
- 「小さき欠片よ、我が身を映すものよ、いつかまた会うだろう」
- すなわち、ダアトが管理者としての仕事だけ粛々とこなせる期間。
- 世界システムによる剥奪か何かによる、管理者権限の喪失。
- 想いの力が例外を発生させている説はあるけども。
- 幻のサポーター連中は百が剣でやっていることをバスケットボールなりテニスのラケット&ボールでやっていたりと、実はぶっ飛んでいるのでは?
- すなわち、リフレクターの選出権。
- 澪は基本的にメンタルダメージ量が振り切れる展開ばかりなので美弦が特別脆いかというとそうでもな気はするが。
- ダアト=コモンもリフレクターをひとり選出して戦わせる設定だった。
- 紫乃を学校に送り出すシーンや、詩が指輪を眺めているカットにおいて、灰は降っていない。
- 想いの力の強さや安定感により、抵抗できる類の精神攻撃と思われる。
- AASAが調査しているフラグメントの異変。
- 複雑で申し訳ないが、本記事の説では日菜子によるダアト反射、再構築、ダアトの管理者権限剥奪、詩による再構築要求、管理者不在検知の順で事態が進行している。管理者権限剥奪時に管理者の不在チェックしないガバガバ世界システムである。
- 彼女の性格上、和解シーンはつまらないので見ていないだろう。
- 愛央が7月生まれ、陽桜莉が4月生まれなのでそれをもって年上とした説もなくはないが、同学年の相手を自然に年上と表現するかというと微妙だろう。
- 姉妹ふたりで過ごしている以上、高校留年が効くほどの経済的余裕があったとは考えにくいが……。
- 澪公式サイトには所属として聖イネス学園高等部と書かれているが、アニメの展開上で明かされた事実が優先されるだろう。
- 伶那は特に、冷房で冷えることに文句を言っていそうなイメージがある。
- それにしてはやや彩度が高めにも思えるが。
- 詩帆のココロトープでも、夕暮れが終わりの象徴として描かれている。
- 望み通りの世界ができないことを知って逆上した詩にボッコボコにされて歯車に放り込まれた、的な展開があると筆者は大喜びするが、どうだろう。
- 細長く、システムのような正八面体に近い寸胴の装飾ではないが。
- 余談だが、紫乃が美弦たち手駒に渡した指輪が赤かったのは、詩と組んだ原種が背後にいると筆者は考えている。