【ゲーム感想】ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて S
目次
前置き
筆者がプレイしたのはPS4版である。
本記事では、Sがつく前のバージョンについては触れない。
筆者とドラゴンクエスト
本作を語るにあたって、簡単に筆者が人生においてドラゴンクエストとどう関わったか説明しておかねばなるまい。
言ってしまえば筆者の自分語りになるので、興味がない方にはこの項目を読み飛ばしていただきたい。
筆者が初めてドラゴンクエストに触れたのは、ファミコン時代である。
親が熱心なファンだったのか知らないが、我が家にはファミコンの実機と、ドラゴンクエスト2, 3, 4があったと記憶している。1
当時、幼かった筆者はセーブや続きから始める方法がわからず、序盤ばかりを繰り返しプレイしていた。
そうこうしているうちに、ファミコンの実機が動かなくなり、スーパーファミコンの時代になってからはFFシリーズに熱を上げていたため、しばらくドラクエとは縁がなかったのである。2
時は流れ、筆者が次に手にしたドラゴンクエストは7、エデンの戦士たちであった。
ハードはPlayStation2がすでに登場している時代であり、序盤ばかり繰り返しプレイしていたあの頃に比べ、筆者もいくらかかしこさが上がっていたので、ちゃんと冒険の書に記録できるようになっていた。
ストーリーのクリアまでこぎつけ、人間の職業はすべてマスターし、神様の撃破ターン数を縮めるやりこみにさえ手を出すまでに成長していた。
ところが、筆者がドラゴンクエストシリーズに触れたのはそれきりだったのである。
シリーズの各作品について名作であることはあちこちで語られていたし、そういった伝聞で中途半端な知識は身につけていた。
BGMもどこでか知らないがちらほら聞いたことがあり、4のモシャスなどの有名なシーンも聞きかじる程度で知ってはいる。
本作11Sはドラゴンクエストシリーズの集大成と言われるだけあって、さほど深くドラクエに関わってこなかった筆者でさえも反応してしまう局面が度々あった。
また、ナンバリングシリーズを全てプレイしている友人の解説を聞きながらプレイしたシーンもあり、人並みと言わずともそれなりに本作の魅力に触れられたのではないかと思う。
グラフィックス
筆者としては、3Dになってから初めてのドラゴンクエストである。
鳥山明の絵を3Dにして違和感なく動かせるものかと疑問だったが、全く無用な心配であった。
ムービーシーンは流石に違和感が拭えない部分もあった3が、それ以外では普通に可愛いしカッコイイキャラモデルが動いている。
背景の映像も、リアルに寄せすぎず、かと言ってチープではない綺麗な景色が楽しめる良いものだった。7のあのダンスムービーから、えらい進化である。4
登場モンスターのグラフィックは、7をプレイした当時の記憶にいる連中もそこそこ多く、懐かしさで楽しめた。
本作は3Dモードと2Dモードを切り替えることができる。
2Dモードは昔懐かしい2Dドットで描かれるため、画面の印象が大きく変わる。
ただし、シナリオ中にモードを切り替えてしまうと、モード切替時に選択したチェックポイントまで進行状況が戻され、クエスト受注状態等もリセットされてしまう罠がある。
筆者はそれを一度踏んで以来、ずっと3Dモードでプレイし続けていた。
例外的に、ヨッチ族の村では強制的に2Dモードになるがシナリオの進行状況等に影響はなく、3Dモードを選んでプレイしていたからと言って2Dモードが楽しめなくなるかというとそういうわけではない。この点は良かったと思う。
カラーストーン採掘場やマチルダ、キーファは記憶の中にいるそのまま5出てきてくれた。種返せ。
映像美だけでなく、カメラワークや演出も良かった。
特に、過ぎ去りし時を求めた後、フィールドに出てから冒険の旅が流れるシーンやオープニングなど、勇者が馬に乗る場面の見せ方が素晴らしい。
サウンド
BGM
これも、ドラゴンクエストの集大成であった。オープニングの序曲から、最高のオーケストラアレンジになっている。ありがとう東京交響楽団。
洞窟のBGMは、ストリングスや木管、ホルンの鳴らし方にドラクエを感じた。
シリーズ作品から様々なBGMがアレンジして使用されており、 悲しみを胸に
や パラダイス
は7由来のもので筆者にも聞き覚えがあった。
ヨッチ族の村から行ける冒険の書の世界では、各シリーズのBGMが8ビット風にアレンジされていて、これも良かった。
5の通常戦闘は、ドラクエの戦闘といえばこれ、という印象がある。本作以前にどこで聞いたのか全く思い出せないのだが。
そして、本作で最も印象に残ったBGMはやはり、 冒険の旅
だ。
イントロの時点でまさかと思ったが、金管のメロディが入ってきた時点で全身にドラクエがみなぎってくるのを感じた。
どこかで聞いたことがある曲であったが、遠い昔にプレイした3の序盤の記憶だったのかもしれない。
宿屋や冒険の書に記録する際のジングルは、なんというか安心感がある。
キャラクターボイス
本作は3Dモードにおいて、メインシナリオがフルボイスで描かれる。
勇者は相変わらず喋らないが、うなずいたり息を呑んだりするときに声がついている。
恐ろしいのは、本作のキャラクターは例えメインキャラクターでなくとも、だいたいどこかで聞いた声だということ。
シナリオ上で一度しか出てこない、さして重要なポジションにいるわけでもないNPCやボス敵に大ベテランの声があてられていたりする。
筆者が一番驚いたのはホミリンの声かもしれない。
シナリオ/キャラクター
受け継がれる神話、あるいは英雄叙事詩
ドラゴンクエストは、言ってしまえば神話、あるいは英雄叙事詩である。
本作はロトシリーズの大昔、それこそ神話の時代に相当する物語だという。
筆者が本作について神話的だと感じ始めたのは、崩壊したイシの村に戻ってきた勇者が、過去のイシの村で育ての親、テオと出会うシーンからだ。
過去へ飛び、過去を変えた結果として今が変わる。
タイムパラドクスやバタフライエフェクトを物ともせず、ピンポイントに今が変わるのは7の過去を修正する旅にも似ている。おそらく、他のシリーズにも似たような展開はあるのだろう。
かつて、FF8のスコールが過去へ戻ってママ先生にSeeDの話をする、その結果SeeDが作られるというシナリオについて、神話的であると解説するサイトがあった。6
予め定められた運命がそうなっているので、時間軸をベースに因果関係を考えることに意味がなく、強いて言うならば因は運命を定める預言にあり、過去を変えるという行為や変えられた過去に基づいて変わる未来、それらをひっくるめた運命が果である。
乱暴な言い方をしてしまえば「そういう話だから」なので、にわかには納得し難い説かもしれない。
しかし、本作には、本作のシナリオが神話であることを明確に表すシーンが存在する。
邪神ニズゼルファを撃破した後に流れるエンディングの、最後だ。
3をプレイした人であれば思わず息を呑んだであろう、母親が勇者を起こしに来るシーンの直前。
母親は、11のシナリオが描かれていたであろう冒険の書を閉じ、本棚にそっとしまうのである。
本作のシナリオは後の時代、新たなロトの勇者にまで受け継がれてきた神話だ。
本作をプレイするということはすなわち、この神話を追体験することに他ならない。
だから、以下の点について時間軸をベースに考えると混乱してしまうのである。
- テオが未来からやってきた勇者の言葉を聞き、未来の勇者に向けて魔法の石を残した
- 勇者が過去に戻ってウルノーガを倒し、未来を変えたにも関わらず、セニカが過去に飛び、ローシュと再開しても今が変わらない
神話や叙事詩は、部分ごとに異なる視点で描かれたものかもしれないし、後の世で創作が付け加えられたものかもしれない。
しかし、重要なのは描かれた冒険の書は決して変わらないということだ。
だから、セニカが過去に飛んでローシュと再開し、仮にウラノスの闇を打ち払ったとしても、冒険の書に描かれた内容には何ら影響がない。
過去に飛んだセニカとローシュたちの物語のその先は、神話の外側であり、誰もが自由に想像して良い領域にある。
勇者が過去に飛んでから出会った仲間たちが、未来を変える前の記憶をうっすらと知覚しているのも、神話に描かれた不変の7内容だからだろう。
本作の神話的なシナリオが、この高解像度で描かれたこと、そしてそれに出会えたことはこの上なく喜ばしい。
筆者は、これから1~3をプレイするつもり8だが、そのときにもこの視点でシナリオを眺められると思うとワクワクしている。
ホメロスは救われたのか?
ベロニカは過去に飛んだことで救われた。ウルノーガによって失われた、様々な命も同様に。
しかし、ホメロスだけは主に裏切られて没してしまった。
魔王誕生以前から闇の眷属として悪事を働いてきた報いと言えばそうかもしれないが、彼とグレイグのシナリオだけは他と違ってややビターな終わり方をする。
彼の魂は友の心に触れ、鎧として共に戦うこととなる。時をさかのぼっても二度と戻らない、しかし永遠の友情を描く苦くも熱いシナリオだった。
のだが。
主にシナリオ外の要因でホメロスが救われていなかったのが少しさみしかった。
まず、筆者がグレイグとホメロスのシナリオをかなり後回しにしてしまった9ため、グレイグとホメロスに力量差が有りすぎたこと。
あろうことか、斧装備で運用していたため、天下無双をメインウェポンの一つにしてしまっていたのも、シナリオとの温度差を感じてしまい、いたたまれなかった。10
そして何より、双頭の鷲のよろいの性能が他に比べて残念であるというのがつらい。
守備力は入手時期を考えて控えめになってしまうのも致し方ないのだが、せめて属性耐性をつけたり、状態異常耐性を打ち直しで50%くらいまで伸ばせればまた違ったのだが……。11
もうちょいこう、なんとかさあ……!
システム
ドラクエ式コマンドバトル(CTB)
基本は同じなのだが、3Dモードと2Dモードでは戦闘の方式がやや異なる。
3Dの場合は、素早さに応じてバトラーごとに手番が回ってくるCTB方式。
2Dの場合は、旧来の2Dシリーズ同様、ターンのコマンドを全員分入力し、全員分の行動が終わるまで処理をする、の繰り返しである。
おそらく難易度も変わるのだろうが、しばりプレイをするのでもなければ特に大きな違いにはならない。
オートバトルバンザイ
ガンガンいこうぜ、バッチリがんばれ、いのちだいじにのように、本作にもオートバトル用の簡易的なAI選択があり、それによってキャラクターごとにオートで戦闘させることができる。
筆者は巨神と誓女12を失った痛みが忘れられず、基本的にオートバトルでボス戦もこなしていた。
最後の裏ボスも種を集めたり前衛後衛の配置を考えたりしてなんとかオートバトルで殺しきったくらいである。
AIは割と頭が良くない部分があり、最適行動からは程遠いのだが、それでもなんとかクリアできてよかった。
におうだち等、オートでは絶対に使ってくれないスキルがあるのは辛かった。
ドラゴンクエスト スーパーリング
終盤のボスは基本的に状態異常複数持ちでかかってくるため、複数の状態異常を50%防ぐことのできるスーパーリング+3を2つ装備するのがほとんどデフォになってしまった。
ネルセンの試練ではドクロのゆびわにも出番はあったものの、そのくらいで、ほかは基本的にスーパーリングをつけていないとスタートラインに立てない。
ほとんどのボスで最適装備が固定化されてしまうというのはいかがなものかと思う。
もう少し、特定の属性に耐性を持たせると劇的に楽になる相手だとか、そういったバリエーションがあっても良かったのではないか。ゴールドアストロンは許さないけど。
やりこみ
トロフィーコンプ
おそらく、最も厳しいトロフィーはおしゃれ装備のコンプリート。
マルティナの妖魔のバニースーツが、失われし時の災厄&怨念の撃破を前提とするため、ここが一番むずかしい。
筆者もかなり苦戦した。オートバトルにこだわらなければもう少し楽に行けるかもしれないが、それでもレベルカンストが大前提になるほどの難易度である。
筆者は、前半に脆いメンバーを集め、マルティナで削り、後半はカミュとそれを支える回復メンバーでガチガチに固めた。
災厄を残してしまうと発狂であっという間に床ペロさせられてしまうので、災厄を先に倒すか同時にダメージを与えていけるよう、後半の火力はカミュに、前半はマルティナに任せる。
他に面白いトロフィー条件として、ふっかつのじゅもんを間違えるというものがあった。こういうお遊びトロフィーも好き。
称号コンプ
おそらく、苦行。ウマレースをおうごんのたづななしでタイムアタックする必要があり、その時点で地獄である。
失われし時の災厄&怨念を50手以内に倒すのは、フルオートでなければ頑張ればやれるだろう。フルオートでやるにはドーピングの完成までひたすら時間をかける必要がありそうである。
ステータス最大
本作はちからのたねなど、ステータスを増強させるアイテムが敵ドロップによって無限に手に入る仕様になっている。
ちからのたねは輪ゴム&連射機でオート放置しやすいが、まもりのたね等、999を目指そうとすると発狂しそうな仕様のものも。
ラムダ増殖を使えば多少はマシになるようだが、それでも1周に数時間かかるタイプの裏技だし、進行状況をリセットしながらやる必要があり、勇者のつるぎ等の引き継ぎ不能アイテムを多数揃えてからではやる気になれなかった。
公式しばりプレイ
なんと、本作ではシステム面でしばりプレイがサポートされている。
買い物禁止、防具装備禁止、はずかしい呪い13、すべての敵が強いなど、本作の歯ごたえのあるバランスからは信じられないような内容が並んでいる。
これを全部ONにして失われし時の災厄&怨念を撃破する猛者がいるのだから、世界は広い。
総評
ドラゴンクエストシリーズの集大成、総決算とあって、シリーズファンへのサービスが随所に散りばめられていた。
エンディングの演出を見たとき、1,2,3はほとんど未プレイであるにも関わらず、感極まってしまった。14
システム面も大きなストレスはほとんどなく、ドラクエの世界観にどっぷり浸ることができた。
今から、積んである1~3のプレイが楽しみだ。
- もしかしたら1もあったのかもしれないが、筆者の記憶に残っているのは2~4だ。
- いわゆる、DQ派FF派がいた時代。筆者はFF派だったものの、周囲の友人たちはそのほとんどがDQ派だったと記憶している。
- 映像の作り方がスクウェアめいており、今更になって合併の影響を感じた。悪い部分ばかりでもなく、勇者は特にイケメンだったが、セーニャとベロニカはどうしても目の形とややリアル寄りな質感の映像がミスマッチに感じた。
- もう20年も前だが、あの強烈なムービーは未だに記憶に残っている。
- 当時に比べ、カラーストーンは顔がついていたり、かなりつるつるした見た目になっていたが。
- 今だからこそFF8。当時のサイトはジオシティーズのサービス終了に伴い消滅したため、アーカイブで閲覧する他ない。
- ウルノーガを倒して未来自体は変わるのだが、変える前の未来が時間軸の外側のどこかに存在したことは変わらない。
- 35周年で割引していたので3作まるごと買って積んである。
- 具体的には、ネルセンの最終試練に到達するくらいまで。
- 共にデルカダールを守るという誓いそっちのけで、並び立つものなしという名の斧技をブンブン振り回す脳筋グレイグである。ホメロス君の気持ち考えて?
- 筆者、この装備がうちなおし対象外と知った瞬間に、つい成仏したばっかりのホメロス君に難癖をつけてしまった。ごめんね。
- 2021/06/30にサービス終了したソーシャルゲーム。フルオートで放置し続けられる戦闘システムが恋しい。
- 戦闘中一定確率で行動不能になったり、まれにNPCに話しかけられなくなるらしい。詰むでしょ。
- 最近、ホロライブ3期の団長が配信でボロ泣きしていたようである。シリーズ経験の浅い筆者でさえ感動したのだから、シリーズファンが触れればこういう反応にもなろう。