【ゲーム感想】ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~
目次
前置き
筆者はアーランド/黄昏/不思議シリーズをプレイ済みの救いがたい百合豚である。
本記事にはライザのアトリエ本編のネタバレを含むため、未プレイの方は注意。
グラフィックス
直前にプレイしていたのがルルアのアトリエであったからか、背景をはじめ、世界観の解像度が一気に上がった感じがする。
リアルすぎる表現でなく、それでいてしっかり鮮やかな夏を表現する光や水の描写がとても美しい。
キャラクターの3Dモデルも前作までとは大きく変えて、頭身が上がっている。
太ももの錬金術士などと呼ばれていたライザだが、そこ以外も服のデザインと身体のラインの出方がかなり際どい。
肩甲骨の辺りがあいた薄手のパーカー、左右非対称な手袋など、あまりにも盛りすぎでクラウディアが目立たないほど。
顔の表情の変え方はバリエーションが少ないのか、シーンによってはやや合っていないところもあったように感じるが、その分戦闘シーンでのモーションがダイナミックで見ていて気持ちの良いものになっている。
OPは3Dモデルを利用して作られているが、これもまたひと夏を全力で表現しに来ており、何度も見てしまう。
イベントスチルはシナリオがコンパクトにまとまっている関係上さほど多くないが、どれもライザの夏の一幕を飾るにふさわしく、過不足がない。
中でも、クラウディアの好奇心での無邪気な横顔と、キャンプでの一夜の火を移した瞳と結んだ口の対比にはライザのアトリエの夏が凝縮されていると言っても良い。
無知で無邪気で退屈を持て余していた少女が、あまりにも濃密なひと夏で遂げた成長が感じられ、大変にエモい。
サウンド
通常戦闘曲 穀雨、麦の風 があまりにもアサノハヤトサウンドで好き。
初めて聞いた時に、この爽やかで軽快なギターとピアノ、フルートの感じでシャリーやブルリフを思い出したが、なるほど納得。
戦闘の時間がなかなか長引かず、ゲーム中であまり曲を長く聞いていられないのが寂しいくらいに好き。
虹色の夏、ソラミミのみずみずしい夏サウンドや、果てなく続く道の冒険感も良い。
本作のアトリエBGM、秘密の隠れ家はこれまでのシリーズとはまた違った雰囲気の曲。
フルートからトランペット、そしてオーボエとつなぐ旋律が気持ちいい。
そして何より、タイトル画面の曲 ひと夏の大冒険 が筆者の好みに刺さった。
素朴で軽快なトランペットによるイントロから、壮大な冒険を表すサビにつながり、寄り添うようなフルートの音で締めくくる、本作を象徴する一曲になっている。
エンディングを見たあと、ライザ以外の全員が後ろを向いたタイトル画面でこの曲が流れるところがずるい。
SEで言えば、度々聞こえてくるセミの声が夏を際立たせてくれた。
ミンミン、ツクツク、ヒグラシと、各種揃えたセミの声が、強烈で鮮やかな夏をプレイヤーの耳に届けてくれる。
シナリオ/キャラクター
本作のシナリオは、シリーズ一作目らしくかなりコンパクトにまとまっている。
それでいて、あまりにも濃密で満足感のある、ひと夏の冒険譚だった。
本作は、ひと夏の大冒険を通じて少年少女が成長し、そしてそれぞれの道を歩み始める物語である。
退屈でなんてことない毎日、そこから抜け出そうと燻るライザたちの心が、各々の運命的な出会いによって一気に輝きを増す。
クーケン島の舞台背景の描写が、シナリオ進行で少しずつ明らかにされていくところも飽きさせないし、それによって少年少女がそれぞれの思いをもって団結し、前へ前へと突き進んでいくところも好き。
エンディングのラスト、アトリエを上空から見たアングル、ヒグラシの鳴き声で占めるカットに、無我夢中で走り抜けた、どうしようもなく充実した夏の、どうしようもなく寂しくて、どうしようもなく満たされた終わりを感じた。
そこから、鮮明な記憶の青空を背景に、ライザの目元に輝く光を映してゲームエンド。タイトル画面でライザ以外が後ろを向いてそれぞれの道へ歩き出したことを表現してくる。
コンパクトであるが故、ひと夏の間にこのシナリオを完走できたことをとても幸運に思う。
本作シナリオパートは、夏に始め、その夏のうちに走り切るべき、夏そのものである。
ライザリン・シュタウト
お前のような平凡な少女がいるか。
というくらい、キャラデザが肉感的でぶっ飛んでいる。本人がそれに自覚的でないところもやばい。
昔から一緒にいるレントやタオはもう慣れているかもしれないが、クラウディアから見たときの印象がどうなっているかとても気になる。
村ではレント、タオとあわせて悪ガキ3人組1という認識をされていたようだが、島の人間の中でも特に冒険心が旺盛。
その冒険心と、外からやってきた錬金術が化学反応を起こして、とにかくがむしゃらに前へ突き進む錬金術士ライザリン・シュタウトが誕生する。
目の前の問題をそのままにしておけない素直さがあるが、それ故にボオスとの因縁は暗い影を落としてしまっていたのだろう。
素直であるが故に、大人の回りくどさについていけないというような描写も、ゲーム前半を中心にある。
子供と大人の対比も、子供たちの成長とともに本作のテーマに組み込まれているのではないかと思う。
次回作ではアトリエシリーズ史上初となる主人公続投らしい。
他のみんながそれぞれの道を歩き始めたのに対し、ライザだけは島にとどまる選択をした終わり方は、やはりもっと彼女の成長を描く余地があるということなのかもしれない。
CVのぐちゆり。元気で可愛い声。
レント・マルスリンク
酒浸りのくそオヤジに悩まされる少年。
脳筋キャラなので話のメインに深く関わるタオと違い、ちょっと影が薄い。
CV寺島拓篤。さすおにの西城レオンハルト、Fate/hollow ataraxiaのアンリマユの人。
タオ・モンガルテン
弱気なインテリ眼鏡ショタ……だったが、ライザたちに振り回されて冒険を繰り広げるうちに、滅多なことでは動じない度胸がついた。
ゲーム開始時点で一番ひ弱そうな彼が、作中で最も成長が感じられるかもしれない。
知的好奇心を原動力にして得た知識が冒険の中で重要な役割を果たすことになる。
CV近藤唯。不思議シリーズのコルネリア、ルルアのアトリエのマァナの人。
どちらとも全く違う演技で、聞いただけでは同一人物と判断できないほど。
次回作では声変わりしているらしい。
クラウディア・バレンツ
街から来た商人の娘。おしとやかなお嬢様……かと思いきや、意外とお転婆なところも。虫が平気だったり。
ライザのせいで目立たないが、彼女の服もかなり面白い構造をしている。
ちょっとばかりライザへの愛が重そうな感じ2がする。
シナリオ上でさほど強い感情をライザに向けたりしないものの、メニュー画面の構図でライザに手を引かれてるのとか、OPで見つめ合ってるのとか、要所要所で良い立ち位置にいてくれる。
先行DLCとして配信されたライザの衣装 ディヴェルの抱擁 にまつわるイベントが大変良いらしいのだが、2020/09/01現在未だに配信されていない。3
CV大和田仁美。わた天の小依ちゃん、まちカドまぞくの良ちゃん、FGOのアビゲイルの人。
リラ・ディザイアス
髪と一体化している大きな耳と、紫がかった肌が特徴的なオーレン族の女性。とてもグラマラスなダイナマイトボディの持ち主。
色々と割り切った性格をしており、あまり感情を表に出さないが、アンペルとともに冒険の中でライザたちを認め、よく見てくれている。
生きてきた環境が過酷だったのか、食に関する話が多いのが特徴。
鉱石に良い思い出がないとか、宝石に興味がないのは食べられないからですね?
CV照井春佳。ゆゆゆの結城友奈、みでしの小紅、黄昏シリーズのホムンクルス、クロワルール・シグマのカテリナ、ふし幻シリーズの屠自古、りりくるRSの紗恵香の人。
アンペル・フォルマー
リラとともに旅をして遺跡を調査している錬金術士。
錬金術士だが、ある事情で腕を怪我しており、高度な調合は一切できない。
男性錬金術士で暗い過去を持つというとロジーを思い出すが、彼も同様に研究者気質の持ち主。
だが、ロジーほど周りが見えなくなるわけではない様子。
ライザたち少年少女に対し、ときに見守り、ときに導き、ときにずる賢い、頼れる大人として描かれている。
リラ曰く、人間としては相当な若作りであるらしい。数十年前に王宮付きの凄腕錬金術士だったというから、50歳を超えている可能性すらある。荒木飛呂彦先生のご親戚か何かだろうか。
ステータス画面で見られる絵がドーナツをくわえていて可愛い。
そして、研究に没頭するときは甘いもの買い込んで引きこもるタイプですね?
CV野島裕史。
ボオス・ブルネン
クーケン島の水源を抑えている名家、ブルネン家の少年。
何かと尊大でライザたちに突っかかってくるが、その理由も作中でしっかり明かされる。
彼自身もあるきっかけで、誇り高いブルネン家の男として成長していく。
CV阿座上洋平。
アガーテ・ハーマン
クーケン島の村の護り手。
ライザたち悪ガキをたしなめながらも、なんだかんだで見守ってくれる大人の一人。
護り手ではあるが、村から出ることがあまりないのか、かっこいいところが見られない。
CV浅野真澄。スパイラルのひよの、D・N・Angelの梨紗、ToLのクロエ、ネプテューヌシリーズのサイバーコネクトツーちゃんの人。
カール・シュタウト
ライザの父。農家だが穏やか……を通り過ぎてウルトラマイペースなお父さん。
序盤こそそのめっちゃ良い声と独特のキャラ付で強烈な印象を与えるも、ゲーム中盤以降は拠点がアトリエに移ったため、妻共々物語からフェードアウトしていってしまった。
父3人が子供について話すサブイベントが好き。
CV緑川光。
ミオ・シュタウト
ライザの母。今でこそ肝っ玉母ちゃんをそのまま具現化したような貫禄ある見た目だが、若い頃はさぞ美人だったのだろう。面影がある。
CV永島由子。D・N・Angelの瑪瑙、無双シリーズのくのいちの人。
ルベルト・バレンツ
クラウディアの父。商人としてクーケンフルーツ流通路開拓のために、娘とともにクーケン島に滞在することとなった。
顔つきは厳しそうだが、口を開けば穏やかで優しいお父さん。
ライザに娘をくださいと言われたので、娘を託すに足る相手かどうかちゃんと課題を出す父君の鑑。
CV浜田賢二。アニメ版TtTのガイウス、ToSRのリヒター、トトリのアトリエのグイードさんの人。
モリッツ・ブルネン
ボオスの父。威張りくさっており感じの悪い印象を受けるが、それはライザたちの目線から描かれているため。
大人の世界にはちゃんと持ちつ持たれつの関係があるのだ、とフレッサも言っていた。
商人としては腕の立つほうらしい。
古老ほど頭が固いわけでもなく、水源というアドバンテージを失ってもまたすぐに立ち直るだろう。
CV竹内良太。エルシャダイのルシフェル、ふし幻シリーズの霖之助さんの人。
ランバー・ドルン
ボオスにくっついている金魚のフン。
ボオスは見せ場があったのに、彼だけはちょっと情けないシーンしかなかった。
CV落合福嗣。
キロ・シャイナス
異界で一人、聖地を取り戻すために戦い続けるオーレン族。
目隠れ属性。
CV三上枝織。赤座あかり、進撃の巨人のクリスタ、りりくるの陽奈の人。
声のないネームドキャラクター
本作には、クーケン島の住人たち大勢に名前がついている。
声こそついていないものの、彼らそれぞれにクエストで見られるサブストーリーがあり、各々魅力的。
パミラ
名前もちょっと変わってるし声もついていないが、やはりあの人なんだろうか。
システム
ボード式錬金術
ボード上のマスに素材を入れ、属性値に応じてルートが開放される。
一度の錬金術で投入できる材料の数が決まっており、その回数内で調合する必要がある。
マスにはそれぞれ、特性枠を増やしたり、効果を付与・強化したり、品質を上げたりする効果がついている。
レシピ変化マスに到達すると、今作っているものが新しいレシピに変化する。
ストーリー中こそパズル要素として頭を使うのだが、ストーリークリア後はひたすら楽に、気持ちよく作りたいものが作れる。
特に、影響拡大のついた素材を投入したときの気持ちよさが半端ない。影響拡大+3の賢者の石など、ボード上のマスが満たされていくのと同時にプレイヤーの心まで快感に満たされていく。
通貨はジェム
本作では、すべてがジェムによって賄われると言っても過言ではない。
ストーリー中では行商人からお金でものを買うこともあるにはあるのだが、クリア後はジェムですべて解決する。
量販店不要 即時複製ちむちゃんがいるからね
なんと、錬金術によって作成したアイテムを無限に増やす仕組みがある。しかも、時間経過なしで即座に。
ジェムを消費することになるのだが、賢者の石と赤の輝石を利用した無限稼ぎによってジェムは手軽に無限に手に入る。
頑張って効果や特性を揃えたアイテムや装備は、これのおかげで必要分さっと揃えられる。
面倒な中間材料も、このシステムで増やしてしまえば問題ない。
唯一の難点は、増やしすぎてコンテナを圧迫するということだ。
リビルドシステム まずは品質 あとで効果と特性
錬金術で作成したアイテムを、リビルドすることができる。
ボードを引き継ぎ、素材を継ぎ足してマス上の効果を発現させていくことができる。
レシピ変化はできないし、継ぎ足した素材の属性値+1だけアイテムレベルが上昇し、アイテムレベルが錬金術レベルを超えることはできないという制約はある。
投入ごとにジェムも消費するが、武器錬成や複製に比べれば微々たる消費。ないに等しい。
そして、リビルドにおいて投入した素材による品質の変動はない。
つまり、最初にできるだけ品質を高くアイテムを作り、その後リビルドで効果や特性を盛っていく、という作り方が可能になっている。
これのおかげで、できるだけ大量のゴルドテリオンやエルドロコードを混ぜ込んだ装備を作ると、えらいことになる。4
ストーリー中もちゃんと調合させる
クリア後はひたすら快適に調合できるが、だからといってゲーム中での調合機会をすっとばせるかというと、そうではない。
難易度VERY EASYでもあれば別だろうが、ストーリー中のボスは基本的にノー調合では厳しく、しっかり調合して挑む前提のバランス調整になっている。
アクティブタイムバトル
戦闘はなんと、アクティブタイムバトルになった。
フォーカスを当てているキャラ以外はオートで行動するが、行動指示はガンガン行こうぜか通常攻撃かの2通り。
通常攻撃でAPを増やし、APを消費してスキルを使ったり、タクティクスレベルを上げて戦闘を有利にしたりしていく。
難易度NORMALでは道中の敵はほとんど弱く、ボスキャラがなかなか手応えのある感じの調整になっている。
アイテムを使うにはコアチャージを消費する必要があり、コアチャージは冒険に出た時点で105、冒険から帰るか、その冒険中アイテム枠を一つ潰してコンバートすることで最大値まで回復できる。
コアチャージを消費するが、アイテム自体は消費なしのため、強い爆弾を作ってももったいなくて使えない、ということはない。
最初は面食らうかもしれないが、慣れてくるとこの戦闘のスピード感が癖になる。
アクティブタイムでありながら、誰が何をしているのかは明確で、APがガンガン貯まる終盤にはかなり気持ちのいい戦闘になっている。
やりこみ
トロフィーコンプ
さほど難易度は高くない。
ストーリークリアに加え、裏ボス撃破(難易度問わず)、レシピ、探索の記録などのコンプで足りる。
最後まで残りやすいのはやはりレシピ。
村の依頼をこなして、パミライベントを最後まで見る必要がある。
とは言え、少しだけ時間がかかる以外に何も面倒なことはない。
難易度LEGEND
難易度CHARISMAの上にLEGENDが追加されている。
常に味方に防御ダウンデバフがかかる、敵の行動速度が尋常じゃなく早くなるなど、なかなか難しい。
装備フル強化の試し切りがしたければどうぞ、というくらい。
最強装備作成
可能な限りゴルドテリオンやエルドロコードを積んだ装備を作ったり、武器錬成で全ステータスを999にしたりする遊び。
ここまでやってしまうと、LEGENDの裏ボスでもあまり苦戦せずに倒せてしまうのではなかろうか。
総評
コンパクトにまとまった夏のシナリオとそれを彩るサウンドやグラフィック、気持ちよさに振り切ったシステムでプレイヤーをもてなす、名作と呼ぶべき名作。
百合要素は見ようとすればしっかり見える程度に程よく調整されており、筆者としては十分に嬉しいレベル。