【ゲーム感想】Bloodborne

目次

  1. 前置き
  2. グラフィックス
  3. サウンド
  4. シナリオ
  5. システム
    1. こんにちは、死ね
    2. 戦闘システムはシンプル
    3. 回避はできるだけ前に
    4. 内臓攻撃
    5. 自由なキャラクターメイキング
    6. 自由なステータス割り振り
    7. 血の遺志を捧げよ
    8. マルチプレイ対応
    9. 日本語対応
  6. やりこみ
    1. トロフィーコンプリート
      1. 3種のエンディング
      2. 聖杯ダンジョン
      3. 武器収集
    2. 周回プレイ
    3. DLC
  7. 総評

前置き

筆者は基本的にぬるゲーマーであり、フロムゲーの難易度に耐えうるプレイヤースキルをまるで持ち合わせていない。

メインシナリオやDLCについてのネタバレを含むため、これからプレイされる方は注意してほしい。

グラフィックス

まず、ここからして筆者の心は折れてしまった。

舞台はヤーナムの獣狩の夜。
淀んだ空気に満ちた診療所の扉を開け放ち、ようやくシャバの空気に触れられたと思いきや、一寸先はネガティブゲイト。
中世ヨーロッパ風の町並みでありつつ、「木組みの家と石畳の街」みたいないい雰囲気では決してない。
そこは吉良吉影もドン引きの、腐った血と肉の匂いが漂う終末の地だ。

ゲームには激しい喜びが必要である。そして、深い絶望はいらない。
ウッキウキの冒険か、試行錯誤の末、アクションに関するプレイヤースキルなしに強敵を一方的にボコれる快感か、あるいは好みの形の百合があれば最高だ。
だが、眼前に広がるヤーナム市街はどうだろう。
見るからに閉鎖された息苦しいレンガの町並み、ボスどころか雑魚にすら満ち満ちている殺気、生きた人間らしきものは皆一様にプレイヤーを殺しに来るか、そうでなくても言葉の端々に嫌味か狂気の少なくともどちらか一方を隠すことすらしない。

このゲームは、だめだ。
2016年5月に開始してから2時間と経たずに、筆者は心が折れてしまったのである。

その後、なんやかんやあってトロコンまでなんとかこぎつけたのだが、その経緯については後述しよう。

グラフィックは特別に美麗というほどのものではない。
が、不潔で陰惨とした世界観を表現するには十分なレベルのものである。
世界観をプレイヤーの心に刻み込むために十分な表現力を持っている、という点では、良いグラフィックであるように思う。
虫だの爬虫類だの軟体動物だの、あるいはゾンビ的な何かや流血表現が苦手な人には、なかなかつらいレベルのものではある。

サウンド

これもまた重苦しい世界観を表現するために非常にマッチしている。
BGMは、こういう雰囲気のゲームが好きならまず気に入るだろう。筆者はそこまで気にする余裕すらなくビビリ通しだったが。

新しいエリアに到達したときの デェーン という音で毎度ビビるくらいには、良いサウンドである。
とてもゲームにマッチしていて良いと思うのだが、良いものが好きであるとは限らない。人とはそういう生き物だ。
足音の表現も不安を煽るタイプのもので、ついつい慎重になってしまう。

そして、何より液体に関する音の表現がヤバい。
特にエミーリア戦前のムービーで飛び散った血の叩きつけられる音は、映像と相まって臨場感が半端じゃない。

仕掛け武器をガションガションと変形させる音は重厚で、好きな人にはたまらないだろう。

シナリオ

何も考えずにクリアしただけでは、シナリオが微塵もわからないようになっている。
むしろ何も考えずにクリアできるほど心まで鋼鉄に武装した狩人もいないのではなかろうか。

そのくらい、このゲームは考察ゲーである。

大量の小蜘蛛を従えた多脚生物をやっとかっと倒したと思ったら、なんか妙に背の高い1紅白女2が赤い月を見上げてるし、
外に戻って気づいたらなんか月が赤くなってる3し、
教会の壁に頭落花生みたいな黒いやつ4張り付いてるし、
旧市街でなんか空からやべーの生まれてくる5し、
頭に檻かぶった変態野郎6と命がけの追いかけっこさせられる7し、
赤ちゃんの鳴き声するなと思ったら乳母車になんか黒いの覆いかぶさってくる8し、
死ぬ思いでそれを倒したら家が燃えてる9し、
爺さんに介錯されそうになって断ったら殺されかける10し、
返り討ちにしたら触手いっぱい生えた黒いのに襲われる11し、
そいつも返り討ちにしたと思ったら人形ちゃんが巨大ナメクジを抱えて「狩人様」とか呼びかけてくる12し。

プレイヤーの脳みそに断片的な情報をひたすら注ぎ続けて溢れさせるバッファオーバーフロー攻撃である。
幾重にも折り重なった正気ではない情報に埋もれ、プレイヤーも正気ではいられなくなる。
その断片の中に辻褄の合う光を見出すための能力値が、ゲーム内にも登場した啓蒙というやつである。

とにかく、ゲーム内のフレーバーテキストやテキスト外の表現が秀逸で、考え方次第で幾通りもの解釈ができる。
こういった表現はゲームでしかできないもので、構造としてFF8のそれと類似しているように思う。
ゲーム内を探索して得た情報から深読みしようとすればいくらでも深読みしていける、おぞましいほどに懐の広い、それでいて辻褄の合う解釈がいくらでも出てくる美しい作品だと言える。

なお、筆者はヤーナムを始めとする世界観の重苦しさとボス共の凶悪さに疲弊し、遊びながら考察する余裕など欠片もなかった。
しかしながら、DLCの実験棟、特にアデラインは設定のヤバさが常に脳を刺激してきて、とっても興奮した。

システム

こんにちは、死ね

本作もフロムゲーの例にもれず、死にゲーである。
死んで覚えてね、という体のアクションゲームで、これと重苦しい雰囲気に打ちのめされ、ボスの1体すら倒せずにさじを投げてしまったプレーヤーも多いことだろう。
2020/01/19時点で、一番最初に戦うであろうボスの撃破トロフィー取得率が50%を下回っている13ことからも、本作の敷居の高さが伺える。

よろしいか、狩人の諸君。Bloodborneは難しいゲームだ。
こんなのできて当たり前と言わんばかりにぬるゲーマーに勧めたりするんじゃあないぞ。

戦闘システムはシンプル

3Dアクションゲームの戦闘としてはかなりシンプルな部類ではないかと思う。
モンハンと同様にスタミナゲージがあるが、これは武器攻撃や回避行動、ダッシュ等で消費する。
HPが0になったら負け。相手のHPを0にすれば勝ち。ルール自体に特殊なところは何もない。

そして、プレイヤー側にできる小細工が本当に小細工。
装備の耐性を考えればノーダメージで突破できたり状態異常を無効化できるとか、武器の特性を理解して選べば2~3発でボスを倒せるとか、そういう劇的な抜け道は存在しない。
相手の攻撃を避ける、自分の攻撃を叩き込む、これの繰り返しになる。
それでいて耐性次第で一撃死を免れるくらいにダメージを抑えたり、武器のカスタマイズ次第で与えるダメージが目に見えて変わったりという要素はあるので、小細工は小細工だが無駄ではない。

プレイヤースキルにより重点を置いたバランスになっており、そういうゲームが好きなプレイヤーにとっては面白いものだろう。
筆者はモンハンのプレイスタイル14からもおわかりいただける通り、自身のプレイヤースキルを基本的に信用していない。
そういったプレイスタイルを好むゲーマーにとっては、本作のバランスはやや苦痛であると言わざるを得ない。

回避はできるだけ前に

基本的には回避行動でローリングして敵の攻撃をかわすことになるが、ボス戦では特にできるだけ前に回避行動を入れなければ避けられない。
最序盤のボスであるガスコイン神父からして、後ろに回避しようとすると追いすがってきてぐちゃぐちゃにされてしまう。
斜め前に転がって避ける、という攻略が有効なボスが多く、その点でもビビリに優しくない。

内臓攻撃

敵が攻撃する瞬間に銃を打ち込むことで怯ませることができ、その怯みの最中に近寄って攻撃入力することで内臓攻撃ができる。15
ダークソウルのシステムから、パリィと呼ばれているようだが、これがなかなか楽しい。

相手の攻撃をしっかり見切ってカウンターを決める、という行為は、プレイヤーを気持ちよくしてくれる。
筆者もこればかりは気持ちよく、銃パリィが通用するゲールマンは初見で突破できたが、通用しないエミーリアなどはかなり苦戦した。

自由なキャラクターメイキング

3Dモデルが特別にきれいなわけではないが、かなり細かくキャラクターメイキングできる。
会社の同期にそっくり似せたキャラクターを作って遊ぶ友人もいた。

様々な見た目の装備を入手することができ、これによってNPCになりきって遊ぶというスタイルもあるようだ。

自由なステータス割り振り

キャラクターメイキングの自由度は見た目だけにとどまらない。
敵を倒すと入手できる血の遺志を消費して、プレイヤーキャラクターのステータスを上昇させることができる。
ステータスを1上昇させるとそれに応じてレベルが1上がる。

筋力にガン振りしていけば、ハンマーを担いでレベルを上げて物理で殴る、が実現できるし、
内臓攻撃の威力を強化したければ技術を上げていくこともできる。

体力を上げて死ににくくしたり、持久力を上げて動きやすくしたりもできる。

武器によっては特殊なステータス割り振りをしないと使えないものがあり、それらを使うためにいろいろなキャラクターを作って遊ぶ楽しみもある。
この試行錯誤の幅の広さも、発売から5年が経とうとしている今でも遊ばれ続けている理由の一つだろう。

血の遺志を捧げよ

敵を倒すと血の遺志を入手できる。
この血の遺志は前述の通りレベルアップに使う経験値としての役割も持っているが、買い物や武器強化の際に使う通貨としての役割も持っている。

つまり、血の遺志がないと回復アイテムすら買えない。16

そしてこの血の遺志、プレイヤーキャラクターのHPが0になると、その場に全て落としてしまう。
もう一度同じ場所まで行って回収すれば取り戻すことはできるが、それまでに再びHPが0になると、回収できなかった分はロストしてしまう。

ボス戦の前にはレベルアップや買い物で消費しておかないともったいないことになりがち。
筆者もはじめたての頃は雑魚相手に何度もロストして、やる気がバッキバキに折られていった。
よく一人で聖職者の獣まで倒したものだと、今でも思う。

マルチプレイ対応

狩人呼びの鐘を鳴らすことで、協力してくれるプレイヤーを二人まで募ることができる。
協力者が入ってきてくれた場合、敵対プレイヤーも入ってきてしまう可能性があるのだが、発売から長い時間が経っているため、野良で侵入してくるプレイヤーはあまり多くないとは思う。17
マルチプレイになるとボスも体力がその分だけ増えるが、囲んで棒で叩けるのはそれを差し引いても余りあるアドバンテージである。

さて、筆者は必死になってボスを倒したなどと書いてきたが、実はガスコイン神父戦以降はマルチプレイに頼った。
そうでもしなければ無理だった。

まず、雰囲気が暗すぎるので、discordなどでワイワイ通話しながらでないと無理だと話したところ、友人がそれじゃあと名乗りを上げてくれた。
このところ、3週間に一度くらいのペースで、日曜の朝4時から生放送しながらやっていたのはそのためだ。
結果、トロコンするに至るまで、途中でストーリーや考察についても話を聞きながらプレイできたので、彼らにはとても感謝している。

これに頼ったため、筆者は今でもゲールマン以外のボスをソロで倒せる気があまりしていない。

日本語対応

Bloodborneの音声はデフォルトだと英語。(日本語字幕あり)
DLCの導入で日本語ボイスを聞くことができる。

筆者はどちらも好きだが、人形ちゃんが早見沙織だったりゲールマンが秋元羊介だったりして耳が幸せなので日本語版でプレイした。

アデライン、CV花澤香菜であの狂気をやられるとたまらなく興奮する。

やりこみ

トロフィーコンプリート

本作は難しいゲームではあるものの、トロフィーコンプリートに運が絡む要素がなく、その点では優しい。
最初のボス撃破トロフィーが50%を下回っていることに対して、プラチナトロフィーの取得率がなんと5.8%。18
それだけ、ハマる人はハマってトロコンまでやり込める良ゲーということだろう。

3種のエンディング

家が燃えてからゲールマンに話しかけた際に、条件を満たすことでエンディングが3種類に分岐する。
強力なボスがいる、いわゆるトゥルーエンドと言われる幼年期のはじまりトロフィーは、実は3種のエンディングの中で最も取得率が高い。19

単純に3周プレイしても良いが、オンラインストレージを利用すれば1周でも3通りのエンディングを見ることができる。
筆者はオンラインストレージを避け、3周した。

幼年期のはじまりのみ、3本目のへその緒を3つ以上使用した状態でないと到達できないため、作中で3本目のへその緒を3つ以上集めておく必要がある。

聖杯ダンジョン

聖杯ダンジョンと言われるダンジョン群の最奥にいるボスを倒すことで、トゥメルの女王、ヤーナムのトロフィーを獲得できる。

聖杯ダンジョンが非常に長丁場であり、ボスの難易度が高いからか、プラチナトロフィーの次に取得率が低い。20

武器収集

武器を全種集めると、狩人の極意トロフィーを獲得できる。
作中で見落としがちな装備がいくつかあり、回収も手間なものがあるためか、聖杯ダンジョンのトロフィーの次に取得率が低い。21

なお、手伝ってくれた友人の一人は店売り武器を最後まで残して他のトロフィーを全獲得してしまったために、プラチナトロフィーのスクリーンショットが武器購入画面になったことを嘆いていた。22

周回プレイ

本作は周回プレイできる。
いわゆる強くてニューゲームだが、敵も周回数に応じて強くなる。

敵の強さは7週目でカンストするらしく、そこまでになると即死が当たり前の世界らしい。
筆者は3周しかしなかったものの、3周目ともなると目に見えて敵の火力が上がっており、強くてニューゲームでありながらも緊張感を失わないバランス調整になっている。

DLC

Bloodborne The Old Huntersを導入することで、新たなマップへ行くことができる。
DLCマップでは本編で明かされなかった重要な情報が明かされるが、これもまた本編同様に断片的であるため、フロム脳を刺激するものとなっている。

無印のトロコンには関係ないものの、DLC側で新しくトロフィーリストが設定されている。
DLC側のトロフィーにプラチナは存在しないが、筆者は友人たちに連れられてこちらもトロコンした。

総評

なんか流行ってるしちょっとだけやってみるかという軽い気持ちで手を出し、ひどい目にあってから4年。
友人たちの手を借りてやっとかっと完走できたのは素直に喜ばしいことだと思っている。

自分としては手放しで好きと言い切れないものの、人気が出るのも頷ける作品であることをしっかり認識できて良かった。
高難易度のアクションや暗い雰囲気にめげない鋼鉄の心と、断片的な情報の集まりから無限に考察に没頭できるフロム脳を併せ持ったプレイヤーにはたまらない作品だろう。

繰り返しになるが、ヤーナム市街の時点でポッキリと折れていた情けない筆者をトロコンまで通話やマルチプレイで励ましながら引っ張ってくれた友人たちに深い感謝を。

そして、もう当分フロムゲーは遠慮したいかな……!


  1. どのくらい背が高いかというと、直立したプレイヤー(成人男性?)の頭がやっと彼女の腰くらいの高さになっている。厚底ブーツだとしたら容易に転んでしまう。正気ではない。
  2. 服と肌が真っ白。腹の辺りだけ赤くなっているのは血だろうか。正気ではない。
  3. こんなに月も紅いのに、永い夜になりそうね。正気ではない。
  4. 冒涜アメンは絶対許さない。正気ではない。
  5. 人体をいっぱいデコレーションした巨大な何か。生まれてくるとしか表現できないような出現の仕方をする。正気ではない。
  6. マジで重そうな縦長の檻をかぶってる。下手すると首筋やっちまいそう。正気ではない。
  7. 追ってる側もその辺の操り人形に殺されるリスクがある。正気ではない。
  8. 赤子をあやしてるのかと思ったらいきなり四刀流で斬りかかってくる。正気ではない。
  9. エンディング分岐用の選択肢が出る条件を満たすと燃える。人形ちゃんは相変わらず涼しい顔をしている。正気ではない。
  10. 車椅子に座っていたと思えない機動性で殺しにかかってくる。正気ではない。
  11. ぽっと出でいわゆるトゥルーエンド前のラスボス面してくる。正気ではない。
  12. 月の魔物の血を体内に取り込み、3本のへその緒を使って上位者となった主人公の姿、という説が有力。正気ではない。
  13. 最初に戦うであろうボスは2通りだが、どちらも50%を下回っている。ガスコイン神父が45.6%。聖職者の獣が48.8%。
  14. 防具スキルでガチガチに対策を固めて、プレイヤースキルにできるだけ頼らずに狩る。
  15. 全ての敵にできるわけではなく、大型の敵などには銃怯みが通用しない。
  16. 本作では敵が回復アイテムを落としやすく、詰むほどではないが。
  17. 筆者は早朝4時からのプレイだったため、単純に時間が合わずにほとんど侵入者に遭遇しなかっただけかもしれないが。
  18. 2020/01/19執筆時点。
  19. 2020/01/19執筆時点で幼年期のはじまりが15.0%。遺志を継ぐ者が13.9%。ヤーナムの夜明けが最も低く、10.6%になっている。
  20. 2020/01/19時点で7.1%。
  21. 2020/01/19時点で7.4%。
  22. とは言え、3種のエンディングトロフィーは暗転してスタッフロールに入った瞬間の画面になるため、それを最後に残すと真っ暗なスクショになってしまうのだが。