【百合作品感想】観葉植物になって百合カップルのイチャラブ生活を見守るお話
前置き
作品に関するネタバレを含むため、閲覧の際には要注意
あらすじ
植田華は小学生百合カップルに夢中になっていたら、マンホールに落ちて死んだ。享年十七歳であった
しかし百合厨としての執念が成仏することを拒み、彼女はなんと観葉植物に魂を乗り移らせて小学生の妹の部屋にとどまる
かくして、まだ幼く体の弱い妹の葵、姉を失って悲しむ葵を支える千晴、誰にも言えない秘密を抱えたクラスメイトの泉美の三人の甘酸っぱい成長を観葉植物として見守る華の奇妙な生活が始まった
作品傾向
指標 | レベル |
---|---|
要啓蒙度 | ☆☆☆☆☆ |
糖度 | ★★☆☆☆ |
要啓蒙度とは、この作品に対する百合の見出しやすさを主観的に表したもの
糖度とは、この作品におけるいちゃいちゃ度を主観的に表したもの
タイトルに百合カップルのイチャラブ生活を見守る、とあるように、この作品は中身を見なくても百合であろうということがわかる
カップルというにはやや不思議な三角関係で、イチャラブというにはまだ青く甘酸っぱいシーンが多く、タイトルにはやや偽りあり
互いへの気持ちをそれぞれの速さで、迷いながらも自覚していく成長物語になっており、糖度は低め
要啓蒙度
レベル | 基準 |
---|---|
☆☆☆☆☆ | 明らかに百合。公式が(ガチな)百合と明言している。作品タイトルやパッケージのみで百合とわかる |
★☆☆☆☆ | 明言はされないがほぼ百合。ガチなキャラがいる、など。作品を読み始めた直後に百合とわかる |
★★☆☆☆ | 容易に百合を見出だせるシーンが目立つ。作品を見て十中八九百合と理解できる |
★★★☆☆ | 百合を見出だせるシーンが少ないながらもある。作品を注意深く見れば百合と理解できる |
★★★★☆ | 百合を見出すには訓練が必要。強引に百合要素を見出だせなくもない |
★★★★★ | 訓練しても百合を見出すのは困難。百合ではない |
糖度
レベル | 基準 |
---|---|
☆☆☆☆☆ | ビター |
★☆☆☆☆ | 特別に甘さはない |
★★☆☆☆ | やや甘め |
★★★☆☆ | 甘い |
★★★★☆ | とても甘い |
★★★★★ | 砂を吐く甘さ |
総評
とにかく、開幕で主人公?があっけなく死ぬのが衝撃
しかも全く間抜けな理由であり、残された葵ちゃん(と千晴ちゃん)が不憫でならない
そんなやや暗いトゲが刺さった状態からスタートする物語だが、観葉植物になった華は至ってポジティブ
妹とその友人たちとの甘酸っぱいやり取りに悶えながらめっちゃ楽しんでいる
この文脈、完全に異世界転生モノの亜種である
転生先が異世界ではなく、妹の部屋に飾った観葉植物であるというのはなんとも言えない業の深さを感じる。華ちゃん前世で何したの?
肝心の百合パートは、三人がお互いへの気持ちを全く自覚していない状態から少しずつ、お互いの変化を見て葛藤しつつ成長していく形
(特に序盤の泉美は)女性同性愛に対しての異常性を感じているような描写があり、その点でやや古い価値観で描かれたもののようではある
ただ、泉美は良いとこのお嬢様らしく、家の教育方針が古かったのかもしれない(それにしてはマリみてガッツリ読んでたりするけど)
タイトルではイチャラブと銘打っているが、作品を通して感じるのは戻らない時間に対するノスタルジーだ
作品開始時点では小学生だった三人は、それぞれの想いを抱えながら中学生になり、高校生になり、そして最後は社会人になる
無邪気だった三人はもうあの頃に戻ることはできず、進むことしか出来ない時間の中で少しずつお互いへの気持ちを認識して、大人になっていくのだ
アニメで回想シーンなり何なりが出てきた時に気軽に「もどして」なんて冗談めいてコメントするおじさんにとっては、胸が締め付けられるような切なさをも感じてしまう
終盤で華ちゃんが言っていた「娘が花嫁に行くお父さんは、こんな気持ちなのかなって」というのにとても近い
三人が成長する中で変わってしまったもの、失ってしまったものはもちろんあるのだが、変わらなかったもの、勇気で勝ち取ったものもちゃんとあるのだ、という終わり方が良い
完全勝利! ハッピーエンド!
やや価値観の古さが目につくシーンはあったものの、そうしつこかったわけではなく、筆者として話の流れは好きな部類に入る
ただし作中の重要なシーンにおいて、読者にマリみての知識が要求される局面があり、その点で言えば未読者にはオススメしづらい