【アニメ感想】Fate/Zero
目次
前書き
筆者はFateシリーズはstaynight, hollow, EXTRAのみプレイ済み(CCCはプレイ途中)
Fate/Zero原作は未読である
アニメ版のネタバレを含むので注意
第四次聖杯戦争
staynightから遡ること10年
士郎の(血縁ではないにせよ)父親 衛宮切嗣や、宿敵言峰綺礼が参加した第四次の聖杯戦争を描いた作品
staynightでおなじみのセイバーや金ピカも活躍する、のだが……
単なる前日譚ではない
次回作でも重要なキーパーソンとなるセイバー陣営や言峰神父を描いたシーンは前日譚としての意味合いが強いものの、他の陣営は割とやりたい放題
主人公は一応キリツグなのだろうが、一人の主人公の活躍を中心に描いたstaynightとは違い、他陣営の描写もかなり色濃く多い
主に虚淵がノリノリで書き上げたであろうエグいドラマから、冷徹で頭のキレる外道共の精神が戦いの中で更に歪んでいく悲劇、更には熱い男たちの夢物語まで、これでもかというほど面白い話が詰め込まれている
その濃密さたるや、ニコ動の解説コメントがなければ原作未読組には話の裏まで見通せないほど
そういった意味ではこれこそコメント付きのニコ動で見たい作品と言える
また、この作品の密度を引き上げている要因として、時間を取って描写できない背景について1カットだけの人物の表情や動きで表現してきているというものもある
一度見始めれば、無駄なカットが一切なく、一瞬たりとも目が離せないFate世界に引き込まれること間違いなしである
魅力的な連中
SNのような一人の主人公を中心に据えた物語ではなく、群像劇めいた構成になっており、それがまた非常に面白い
キャラクターはそれぞれ個性的で魅力的
特にライダー陣営とキャスター陣営はマスターとサーヴァントどっちも楽しそうで好き
セイバー
SNでもおなじみ、Fateの顔、騎士王アルトリア・ペンドラゴン
ところがどっこい、彼女はマスターとの相性が致命的に悪く、ランサー戦での負傷もあって作中で思うように活躍できない
彼女のみならず、この第四次はマスターに恵まれないサーヴァントが非常に多い
彼女はその中でも最悪の組み合わせとも言うべき相手と当たってしまった
高潔であることをよしとする彼女の目には、目的を達するためには手段を選ばないキリツグは地獄からの使者か、悪魔と映ったことだろう
同じく高潔な騎士たるランサーとの戦いも幕切れがアレでは、目からハイライトが消えても何らおかしくない
SNの際にキリツグに対して良くない印象を持っていたと話していたが、そのレベルで済む話ではないくらいに、キリツグがヤバい
そんな彼女の見どころは凛としたスーツ姿、2期に入ったところで放たれる川でのエクスカリバーの美しさ
そしてラストの聖杯を破壊するシーンの叫び
「やめろおおおおおおおおおおおおッ!」
結局彼女はキリツグの内面も、聖杯が何であるかすら理解することもなくこの戦いを終えることとなる
SNからは想像できないくらいのへっぽこ王だが、めぐり合わせが悪すぎただけである
いや、本当に次の聖杯戦争で士郎に会えて良かった
それと、アイリのほうが多少なりとも好意的だったのは救いか
衛宮切嗣
一応主人公……?
後にSN主人公 衛宮士郎を引き取った男だが、彼に夢(という名の呪い)を託した時のような穏やかさからは想像もできないほどの外道
目的のために手段を全く選ばない非道さ、その先にあるのが理想だとしても……
彼の過去にあった旅客機撃墜は、EXTRAの無銘エピソードの元になった話だろうか
全くの冷血漢かと思いきや中身はそうでもなく、人間らしい苦悩を覗かせることもある
彼は冷徹な行動を取れてしまう、冷酷な判断を下せてしまう、その能力を持ってしまった男というだけなのだ
自らが底の知れない男でありながら、底の知れない言峰綺礼を恐れているシーンや、冒頭で互いに相手を分析するシーンは二人の対比が実に美しい
CVは小山力也。死んだ目のジャックバウアーである
アイリスフィール&久宇舞弥
リョナ勢向け
言峰さんありがとう
アサシン
残念ながらかませ
エンディングではそれなりにきれいな描かれ方をしているので、おそらく原作では何らかのエピソードが綴られているものと思われる
1クール目のOPでセイバーと戦うシーンの動きがすごい好き
言峰綺礼
キリツグと対になる存在
Fate/Zeroは言峰綺礼のためにある物語と言っても過言ではない
SNにおける言峰綺礼という男がどのように醸造されたかを克明に描き切っている
偶然令呪を得て時臣のサポートという形から参加した聖杯戦争
そこで出会ってしまった金ピカに唆され、己の内に眠る本性に気づいていく
気付いた後はもう愉悦愉悦で神父が楽しそうで何より
亡くした妻も、ケイネスに殺された父さえも最後まで見通せなかった己の本性に酒の味まで覚え、
そして自らと真逆の存在である衛宮切嗣に対して異常な執着を見せ、無味乾燥だった顔に満面の笑みが浮かぶ様は見ている側が楽しくなってくる
ライダー
征服王イスカンダル
自分から真名名乗っちゃうやつ
豪快な大男で、小柄で小心者なマスターとの凸凹コンビが楽しい
彼はマスターとの不仲で滅びた者の多い第四次において、最もマスターに恵まれたサーヴァントの一基と言えよう
アイオニオン・ヘタイロイの壮大さや、23話の別れのシーンは筆者画面の前で大号泣してしまった
ギルガメッシュが認めた数少ない豪傑である
豪快も豪快、底抜けの大馬鹿であることは自らも承知しているフシがあり、キリツグをして「あんなバカに、世界は一度征服されかかったのか……」とまで言わしめている
CVは大塚明夫。こんなに頼もしいサーヴァント、他にいないぞウェイバー君
ウェイバー・ベルベット
ライダーのマスターになった経緯はちょっとアレだが、基本的にはただの少年
Fate/Zeroはただの少年だったウェイバー・ベルベットが一人の男として成長していく物語でもある
最初はとにかく頼りない少年だが、ライダーと共に戦場を駆ける中で聖杯戦争に参加することそのものの意味を見据え、他のマスターが(あのキリツグや綺礼でさえ)至らなかった答えにたどり着く
「い゛ぎま゛ず……ッ、連れて行けばかっ!」
「それは出来ない。僕はあの人に生きろと命じられた」
あのギルガメッシュに「忠道、大儀であった」とまで言わせた人間は他にいまい
人間の弱さとその内に秘めた強さが光る、zero屈指の主人公キャラと言えよう
他の陣営が血みどろの争いをしている中、ライダー陣営だけは平和なシーンが多く、癒し要素であった
アーチャー
ご存知金ピカ
言峰綺礼が自らでも気づかない内に秘めた本性に興味を持ち、自らそれを暴いていくよう仕向けていく
他のマスターの情報を調べる片手間、聖杯戦争に参加する動機について調べさせ、それを自らの口から語らせるという回りくどくも効果的な施策によって
綺礼の本性を暴く傍ら彼自身も愉悦に浸り生き生きとした笑顔を見せてくれる
しかしながら本来のマスターであった時臣に対しては辛辣で、慎重過ぎる姿勢に業を煮やしている様子
ともなればより面白い綺礼につくのは道理であろう
彼は綺礼の本性を自らに暴かせる愉悦部としての側面に加え、対ライダー戦における王の器がまた悔しいけどもかっこいい
「忠道、大儀であった」
遠坂時臣
ギルガメッシュをして「あそこまで退屈な男だとは思わなんだ」と言わしめるほど慎重な男
慎重なのにここぞという時にうっかりなのは遠坂の血筋故か
桜に関してはアニメだけだと単なる非道に見えるが、ニコ動の解説コメントを見るとそうでもないらしい
魔術師の悲しい性分というヤツか
バーサーカー
湖の騎士ランスロット
狂化しているとは言えその実力はセイバーにも劣らずギルガメッシュすら凌駕するのではないかと思うほど
マスターの虚弱ささえなければセイバーを討ち取っていたのは確実であろうし、ギルガメッシュと全力でぶつかり続けられたのなら……
CVは置鮎龍太郎。最後だけちゃんと喋ってくれる
間桐雁夜
間桐桜を臓硯の魔の手から救うべく立ち上がったおじさん
しかしながら魔術の鍛錬を行わなかった一般人も同然の男が戦うには、臓硯の蟲に身を委ねるしかなかった
そうまでしても勝てる見込みはなく、ただ滅びる定めにある彼の姿は痛々しい
なればこそ、彼が言峰綺礼の内に潜む本性を暴くための種になってしまったのだが
葵さんを自ら絞め殺し(たと思い込み)、最後にはその幻影に発狂
自らが救うと決意した相手に見下されて蟲の中へ堕ちていくという、救いのない終わりであった
しかも絞め殺したと思った葵さんがまだ命だけ永らえており、正気を失ってしまったのもどうしようもない悲劇である
父を亡くし、母も狂ってしまった凛がよくもあそこまでまともに育ってくれたものだ
バーサーカー組に関してはマスターとサーヴァントのやり取りがほぼ魔力のみ
会話できないのだから当然と言えば当然か
キャスター
狂気に堕ちたジル・ド・レェ
EXTRAのヴラドよろしく、信仰の果てに狂気に行き着いた旦那
これ系のキャラはいちいちセリフが輝いていて最高にCOOL
こんなイカレた野郎だが、これでもマスターに恵まれたサーヴァントの一基
相性の良さだけで言えばライダー陣営にも劣らないくらい、一二を争う相棒である
龍之介が殺された時もしっかり彼の死を悼んでおり、最後にジャンヌの面影を見て消えていくシーンからも、元々は人間として良いヤツであったのだということがわかる
「我が麗しの乙女に神はどこまで残酷な仕打ちをぉーッ!」
「いかなる非道も悪徳も、決して神罰には値しないのだとぉぉぉッ!」
この狂ったセリフを熱演するのは鶴岡聡
なんと、はいふりの五十六と同じ
神は人を罰しないとした彼の信条は、神は人を救わないとしたEXTRA CCCの臥藤門司と本質的に同じである
青髭は次々と結婚相手を殺す童話の主人公であり、ジル・ド・レェ本人がモデルと言われている
ギョロ目がかわいい
雨竜龍之介
CV石田彰の狂人
青髭の旦那との会話が実に楽しそうで良い
神に対する発言が常人のそれからかけ離れつつ、それが旦那の感性にもどストレートに刺さった最高のパートナーだった
散り際も悲しいと言えば悲しい
ランサー
輝く顔のディルムッド
気持ちのいい高潔な男だが、彼もまたセイバー同様マスターに恵まれなかった
いや、魔術師としては非常に優秀どころか世界最高峰クラスの男なのだが、いかんせん冷静さも詰めも甘く、魔術師に徹しすぎていた
セイバー戦での槍さばきが見ていてとても燃えるかっこよさだが、見せ場はそれくらい
ランサーは不幸、というのはSNと同じく
やはり彼も自害させられるのだが、その死に様は壮絶であった
CVは緑川光。とてもいい声である
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
ねっとりした声の時計塔の先生
とにかく頑固で己のやり方を曲げられない魔術師
研究職としての優秀さはあるのだろうが、戦場において冷静さを保てず癇癪を起こしてしまうのは致命的
しかも相手が相手だったのが……
なにせ、丹精込めて作り上げた魔術工房をホテルごと爆破して吹っ飛ばす外道である
ランサーの不運が感染ってしまったのかもしれない